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建通新聞社(東京)
2018/12/27

【東京】都の2018年重大ニュース 防災対策、12分野を重点化

 大阪府北部地震、西日本豪雨、台風21号、北海道胆振東部地震と大規模な自然災害が頻発し、ソフト・ハード両面から災害への備えの重要性が改めて認識されることになった2018年。「働き方改革」関連法が可決、成立し、建設業の労働環境改善に向けた取り組みが“待ったなし”となった1年でもあった。東京都では防災事業緊急総点検を実施し、調節池の加速的な整備や土砂災害警戒区域の指定の前倒しなど12分野の取り組みを重点的に進める方針を決定。また、不調の急増や事業執行の遅れの懸念が現実化していた入札契約制度については、中小建設業の声を反映して大幅な見直しを行って本格実施に移行した。週休2日や女性活躍をはじめとした「働き方改革等による建設業の魅力向上」への取り組みも本格化した。持続可能な発展に向けて加速した都の2018年の取り組みを振り返った。
【中小建設業の声反映―入札契約制度が本格実施】
 予定価格の事後公表、JV結成義務撤廃、1者入札の中止、低入札価格調査制度の運用範囲の拡大を柱に17年度に試行を始めた新たな入札契約制度だったが、各局での不調発生率が3割を超え、1者入札の中止と合わせ公共事業の執行の遅れに対する懸念が現実化。入札監視委員会が実施した業界団体へのヒアリングでは、中小建設業の実態に合わせた制度の見直しや柔軟な運用を求める声が相次いだ。同委員会がまとめた検証結果報告書も踏まえ、都は入札契約制度改革の本格実施として運用する制度内容を5月に決定。予定価格は事後公表を原則としつつ、小規模案件は事前公表に戻した。混合入札は継続する一方、総合評価方式でのJV結成に対する加点幅を引き上げ、「技術者育成モデルJV工事」を設定して中小事業者のJV参加機会を確保することにした。1者入札の中止は廃止し、入札を辞退した原因などを入札参加申請者に調査することで、1者入札が発生しにくい環境を整えるよう方向転換した。
【防災事業や気候変動対策を進化―12分野で防災事業重点化】
 大阪府北部地震や西日本豪雨による被害の状況を踏まえ、都が取り組む全ての防災事業の総点検を7月に開始。9月に発生した台風21号や北海道胆振東部地震の被災状況も反映し、調節池の加速的な整備や土砂災害警戒区域の指定の前倒し、災害拠点病院での浸水対策など12分野の取り組みを重点的に進める方針を固めた。ブロック塀の安全対策や学校施設への空調設置は補正予算を編成して対応している。
【重点整備区域を環7内側に拡大―無電柱化推進計画を策定】
 小池百合子知事が重点施策に掲げる無電柱化。17年9月施行の無電柱化条例に基づき、18〜27年度の10年間を期間とする「東京都無電柱化計画」を策定。環状7号線内側エリアの対象路線の全線で事業に着手する方針を打ち出した。幅の狭い道路・歩道で事業を進められるよう都が区市町村を財政的・技術的に支援し、都内全域で面的な無電柱化を推進する。整備コストは「3分の1カット」を目標に掲げ、技術開発を促す。
【築地再開発、千客万来施設が始動―豊洲市場が開場】
 小池知事が「安全性への懸念、巨額で不透明な建設費用の増加、情報公開の不十分さ」を理由に開場を延期した豊洲市場。有識者会議による提言を受けて追加対策工事などを実施し、10月11日に2年遅れで開場した。これにより、築地市場跡地をオリンピック・パラリンピック開催時の輸送拠点として暫定利用するための解体工事がスタート。大会後の再開発に向けた有識者会議の提言もまとまり、19年1月にもまちづくり方針の素案が提示される見通しとなっている。
 また、開場延期に伴って事業実施を延期していた豊洲市場の場外施設「千客万来施設」について、事業者が改めて事業実施の意向を表明。都と8月末に施設整備に関する合意書を締結し、オリンピック・パラリンピック競技大会終了後の20年10月に商業棟と温泉・ホテル棟に着工することが決まった。
【全庁で再発防止策検討―委託契約を巡る水道局談合疑い】
 公正取引委員会が水道局の「浄水場排水処理施設運転管理作業委託」をめぐり談合の疑いがあるとみて調査を開始。都の特別調査チームが11月に中間報告書をまとめ、同局職員が設計単価情報を漏えいしていたことを明らかにするとともに、再発防止策として排水処理作業委託(業務委託)の手続きを抜本的に見直し、複数年契約と総合評価方式を導入する方針を示した。水道局以外の全庁でも同様のリスクがないか点検を実施し、具体的な再発防止策の検討を進めている。
【800件で週休2日―働き方改革】
 都技術会議は6月、新たに「働き方改革等による建設業の魅力向上」と「公共インフラ技術等を活用した海外支援」に取り組む方針を確認。建設業の魅力向上については、週休2日制モデル工事や女性活躍モデル工事などの取り組みをさらに推進するとともに、学生向けイベントや現場見学会の実施など魅力発信につながる事業を積極的に展開することを決めた。このうち週休2日工事の契約件数は、17年度の3局約480件を大きく上回る7局約800件に上る見通しとなっている。

提供:建通新聞社