富山市斎場再整備事業PFI事業者選定委員会は、最優秀提案に選定した佐藤工業グループ(代表企業=佐藤工業、構成員=宮本工業所、五輪、ホクタテ、協力企業=山下設計)の審査講評を公表した。
同グループの提案は、民間事業者ならではの創意工夫が盛り込まれており、全般として評価できる内容であった。しかしながら、現斎場における課題の分析と、その解決に向けた取り組みへの視点や、ご遺族や会葬者等の側に立った計画とするためには、更なる改善の余地があると考えられ、これまでの斎場運営で培った経験やノウハウを十分に活かしてほしいとの意見があった。
事業計画については、資金調達計画が具体的であり、複層的なセルフモニタリングやリスク管理等の体制が確立されていることが評価された。他方、リスクの分析が一般論にとどまり、具体的なリスクの想定がなされていないとの意見があった。
施設整備業務については、景観に配慮した低層でシンプルな施設計画、冬季の風や雪を考慮した深い軒下の計画、市内の斎場では例のないキッズスペースや授乳室の計画、火葬炉等の主要機器における将来の修繕を見越した配置計画や、更新の際の工期短縮が図れる工夫などが高く評価された。その反面、動線計画や誘導サイン(誘導案内)計画については、ご遺族や会葬者等への配慮が十分ではなく、多様な動線の集中による錯綜が考えられること等から、利用者の立場に立った計画となるよう改善が望まれる。
維持管理業務については、IoTを活用した予防保全システムによる火葬炉の遠隔診断と、データ分析結果に基づく定期点検やメンテナンスの実施、遠隔操作によるトラブルからの迅速な復旧が可能な点などが評価された。
運営業務については、充実した職員研修の実施や、予約システムの活用による人為的ミスやトラブルの防止策等が高く評価された。他方、ご遺族や会葬者、利用者のニーズを踏まえたサービス向上の観点からは物足りなさが感じられた。
独自の提案については、近年の社会情勢を踏まえた提案であること及び地元企業の参画による地域経済への貢献については評価されたが、実現性については疑問との意見も出された。
選定された同グループにおいては、これまでの経験やノウハウを最大限に活かして、提案内容を確実に実現するとともに、市においては業務水準の維持・向上のための継続的なモニタリングを実施されたい。さらに、市と事業者間で良好なパートナーシップを構築し、人生の終えんの場としてふさわしい富山市ならではの斎場の実現に期待する。
また、提案時点で具体的な検討がなされていない事項や、改善を必要とする事項も多く見受けられたことから、それらの点に係る詳細な検討・検証を行うとともに、特に以下の事項についての対応・工夫・配慮等を、選定委員会として強く要望する。
・施設整備については、現斎場の運営や北陸電力導水管への影響がないよう市と十分に協議していただきたい。特に、盛土による地盤高の嵩上げについては計画見直しを含めて対応を検討していただきたい。
・動線計画、誘導サイン(誘導案内)計画については、利用者(特に施設を初めて利用するご遺族、会葬者)のわかりやすさに十分配慮し、敷地の出入口、構内道路、駐車場における安全性を十分に考慮した計画となるよう改善を図られたい。
・環境配慮について、「環境モデル都市」「環境未来都市」である富山市の新斎場にふさわしい取り組みをしていただきたい。オプション提案とされた水素の活用についても、公的補助金の拡充を働き掛ける等、実現可能性の検討と実現に向けた努力をしていただきたい。
・維持管理業務、運営業務については、現斎場と同等のサービス水準にとどまらず、市民サービスの向上につながる具体的な工夫をしていただきたい。特に、ご遺族や会葬者への対応については、付加価値が生まれるような応対・サービスとなるよう努力されたい。
・施設整備費、維持管理費については、積極的なコスト削減に取り組んでいただきたい。
・建中金利、リスク対応費等については、リスクが顕在化しない場合には市に返還することも含めて、検討していただきたい。