熊野佳彦氏(熊野建設代表取締役)が18年度職業能力開発関係および伝統的工芸優秀継承者知事表彰において優秀技能者表彰(建築とび工)を受賞した。
受賞について「関係者や家族の支援、協力があったから」と周囲への感謝を忘れない。
同氏は、技能検定員、数少ない鳶・土工基幹技能士講師、1級曳家技術士など多くの資格を持つ。同時に、伝統の継承にも取り組むなど、技術者の育成に尽力してきた。
熊野建設は、建築物をそのままの状態で移動する建築工法の曳家をメインに、重要文化財の補修をはじめ特殊技能が必要とされる全国の難工事を手掛けている。4つの特許を取得しており、その技術力を生かした自身の仕事について「歴史的な建築物の保存において果たす役割は大きく、やりがいを感じている」と語る。
高い技術を持ち、後進の育成に取り組んで来た熊野氏が常に考えるのは人材の確保にむけた、とび業界全体のイメージの変革だという。「10年先には技術者が枯渇するのではないか」と危惧する。「良いものを残すのは当然だが、今と昔、世代間で働き方に対する考えが違う。価値観の違いを埋めていかなければ」と伝統を踏まえつつも、業界を現在の若者に合う形に変えていく必要性を訴える。実際に、熊野建設では、働きやすい環境づくりを進め、資格取得の制度も充実させている。
最後に女性の鳶については「男女関係ない、十分に活躍できる。増えて欲しい」と指導、育成のプロが太鼓判を押す。