東京都財務局は、改築期を迎えた都有施設(建築物)の円滑な事業実施に向け、基本計画の作成段階から同局が積極的に関与していく方針を固めた。築40〜50年が経過した都有施設のうち改築計画を作成しているのは約25%にとどまっており、改修・改築計画のある施設でも予算要求に至っていない案件があるなど、適切な時期に事業が実施できなければ都民サービスの低下につながると判断した。合わせて都有施設を所管する各局に対し、5年以内に長期保全計画の策定を義務付け、その作成を財務局が支援する。
都有施設は昭和40年代の高度経済成長期(築40〜50年)と、平成一桁の時期(築20〜30年)に集中して整備しており、それらの多くで設備や建築物の老朽化が進行し、改修や改築時期を迎えている。公営企業部局の所管施設と都営住宅を除いた公共建築物(都有建築物)は2017年度末現在で6892棟あり、延べ床面積の合計は約1162万平方bに及ぶ。このうち築20〜30年で設備機器の改修時期を迎える施設が約2250棟、築40〜50年で改築時期を迎える施設が約1160棟ある。
都では施設の規模や行政ニーズ、利用状況などを踏まえ「主要施設10か年維持更新計画」を策定し、老朽化した施設の改修や改築を進めている。しかし、築後40〜50年の建築物のうち、改築計画を作成しているのは320棟しかなく、主要施設10か年維持更新計画に位置付けた施設以外は、ほとんど改築計画の作成に未着手の状況にある。
また、改修や改築計画がある施設でも、施設整備を実施する際の条件整理や事前調整が不十分で予算要求(工事予算調書の作成)に至っていないものが4分の1に達するという。
こうした状況が続けば、適切な時期に改修や改築が実施できず、安全性や利便性など都民サービスの低下を招く恐れがあることから、施設の所管局(事業局)による改修・改築の基本計画作成に財務局が関与し、その後の設計や工事を円滑に進められるようにする。
また、知事部局では、都有施設を安全に長く使い続けられるよう、施設ごとに予防保全の考えを取り入れた長期保全計画を策定することになっているが、対象の2546棟(警視庁、消防庁、教育庁の施設を除く)のうち、17年度末までに長期保全計画を定めているのは16%にとどまっている。そこで、改築工事や設計中の施設を除き、原則として2023年度までに長期保全計画を作成することとし、財務局がその作業を支援する。都の保全業務支援システムの利用を警視庁、消防庁、教育庁に広げるともに、紙ベースの図面を今後5年程度で電子化するなどして同システムをより活用しやすくする。
提供:建通新聞社