平成30年7月豪雨により甚大な被害を受けた南予地方の斜面崩壊について、崩れた基盤岩の多くが鉱物「ローモンタイト」(濁沸石)を主成分としていることが分かった。7月豪雨による土砂災害と地質特性との関係を調査している日本応用地質学会・西日本豪雨災害調査団(団長・鈴木茂之日本応用地質学会中国四国支部長)による報告会が11月9日に松山市であり、登壇した技術者らがこうした見解を示した。強風化した基盤岩に記録的な大雨が重なり、大規模な斜面崩壊につながった可能性があるという。
南予地方には仏像構造線を境に北部に秩父帯、南部に四万十帯がそれぞれ分布しており、同調査団は9月下旬に秩父帯で1カ所、崩壊が多発した四万十帯で6カ所を対象に現地調査した。
日本工営の古木宏和氏らの調査報告によると、四万十帯では風化が著しく進んだ基盤岩に白色の脈(ローモンタイト)が含まれる。この鉱物には乾燥や湿潤により体積が変化する特徴があることで知られ、構造物やコンクリート二次製品では劣化被害の報告があるという。
被害が多発した四万十帯の斜面では、ローモンタイトを脈状に含む砂岩がこれまでの乾燥や湿潤といった環境下で脆弱(ぜいじゃく)な状態になっていたと推察される。
豪雨災害で甚大な被害があった宇和島市、西予市はもともと降雨量が少ないとされる地域であり、今回の記録的な大雨と強風化した砂岩泥岩互層が土砂崩壊と土石流化につながった可能性が指摘されている。
一方、秩父帯は四万十帯より古い地質であるため崩壊が発生しにくかったとみられる。
報告会の出席者によると、ローモンタイトは他の鉱物に比べ出現量が相対的に少なく、研究はあまり進んでいないとされる。7月豪雨災害の被災地からローモンタイトを含む砂岩が見つかったことで、研究の前進と崩壊メカニズムの解明が期待されるという。
9日の報告会には約80人が出席。岡山の洪水被害や広島・四国の土砂災害について報告があった。翌10日には約35人が参加して南予地方の被災地を訪れ、吉田地区の斜面崩壊現場、肱川浸水地域などを視察した。
提供:建通新聞社