北海道建設新聞社
2018/11/12
【北海道】投資家が札幌に注目 ワールドスター不動産 長谷川社長
米国をはじめとする海外投資会社の人脈を生かし、国内のホテルやオフィスなどの高額不動産を仲介するワールドスター不動産(本社・札幌)。再開発が相次ぐ札幌市内で、2018年2―7月に10億円以上の物件を3件成約するなど、積極的に事業を展開している。不動産鑑定士でもある長谷川傑社長に、札幌都心部の不動産市況や海外投資家の動向を聞いた。
■札幌駅周辺 絶好の対象 創成川東側も今後活発化へ
―札幌都心部の不動産市況についての見解を。
札幌の不動産はこの数年で高騰し、高額取引が相次いでいる。8月に中央区の中島公園にあるホテルマイステイズプレミア札幌パークが約167億円で取引された。仮に札幌駅周辺で同規模の不動産が取引された場合、さらなる高値が付くのではないか。海外や東京の不動産投資会社にとって札幌駅周辺エリアは絶好の投資対象であり、売り物件が出ると非常に熱心に検討する傾向がある。
北海道新幹線札幌駅のホームが創成川をまたぐ形となることが決まり、これまで人の流れが分断されがちだった創成川の西側と東側の回遊性が強化される。今後は東側エリアでも投資が活発化するだろう。
都心部では訪日外国人を見込んで多くのホテル開発が進んでいるが、オフィスの賃貸需要も高く、需給がひっ迫している状況にある。増床移転を希望する会社が、周辺で空室が出ないために移転を断念するケースもあると聞く。インバウンドはあくまで水物だという認識を持ち、オフィスも含めたバランスの良い開発をしていくのが理想だ。
―海外の投資家らは札幌の不動産をどのように見ているか。
海外の投資家は、日本の不動産は割安だと考える傾向にある。不動産を購入する際、銀行から融資を受けるのが一般的だが、不動産利回りと銀行金利との差となるイールドギャップに注目している。マイナス金利政策による歴史的な低金利により、イールドギャップが大きく取れる日本の不動産は割安だとみる傾向がある。
そうした中、不動産が高騰する東京よりも、札幌の方が利回りが取れることから非常に注目されている。ただ、不動産の流動性という面では、東京よりも劣るので、その点では流動性リスクを認識した上で投資するという印象を持っている。
―札幌の不動産投資は今後どのような動きをするか。
札幌都心部の不動産はここ数年高騰が続いていて、富士山に例えると、頂上付近まで来ている。大型不動産に関しては、メガバンクなどが主な貸し手であり、これまでも自己資金を半分程度要求する安全性の高い融資をしていたことから、現在も極端な融資引き締めはしていなく、不動産価格も比較的堅調だ。今後もおおむね安定して推移するものとみている。
一方で、数千万円から数億円程度の比較的小さな不動産は、これまで個人投資家がほとんど自己資金がなくても購入できる融資環境だった。しかし、スルガ銀行問題の影響もあってか、金融機関の融資姿勢が厳しくなり、不動産を購入できる層が減ったため、価格がピークアウトしつつある。
長谷川 傑(はせがわ・たかし)1974年、札幌生まれ。青山学院大経済学部経済学科を卒業後、不動産鑑定士に。不動産投資会社リサ・パートナーズ、あおぞら銀行などを経て、2016年にワールドスター不動産を設立し、現職。