北海道建設新聞社
2018/11/08
【北海道】今冬改正予定の業務報酬基準 中小事務所が経営悪化を懸念
今冬に国土交通省が改正を予定している、建築設計・工事監理業務に関する報酬基準(告示15号)の改正案を巡り、道や関係団体からは不安の声が上がっている。複雑化する業務の実態を踏まえた施策が盛り込まれる一方で、小規模建築物を対象とする業務については報酬の減額が見込まれるためだ。中小の建築設計事務所を中心に経営状況が悪化するのではとの懸念から、改正案の見直しを求める動きも出てきた。
■小規模物件は減額
業務報酬基準は、建築士事務所が請求できる設計・工事監理業務の報酬を算出するため、建築士の標準業務量などを示したもの。現在の基準は2009年に制定されたが、近年業務の複雑化などにより業務量が増加傾向にあることを受け、国交省がことし2月から業務の実態調査を実施。建築設計事務所からの回答を基に改正案を作成し、10月に公表した。
今回の改正は、建物の用途・規模別に定めた標準業務量などから経費を算出する略算方式を対象としている。複合建築物について業務量の割増係数を設定したほか、標準業務との区分が曖昧だった標準外業務を明確化。また床面積に応じた標準業務量を示す略算表の範囲を、これまで対象外だった500m²以下と2万m²以上にも拡大するなど、実際の業務量に見合った報酬の支払いを実現しようとした。
道内関係者は、これらの方針を「業務実態に配慮したものとして評価できる」と、おおむね好意的に受け止めている。ただ、基準の改正が全体としてもたらす効果については否定的な見方が強い。
改正案は、500m²以上の標準業務量を見直した結果、中小規模の建築物を中心に従来を下回る数値を提示した。半減となった項目もあることから、道建築局のある担当者は「道内には比較的規模の小さい建物を手掛ける中小の建築士事務所も多い。割増係数の設定などを加味しても、トータルでは業務報酬が減額となり、経営の圧迫につながるのでは」と指摘する。
また今回新設された500m²以下の業務量についても、想定以下の数値が設定されたとの意見が多く聞こえる。
■道内関係者 見直し求める動き
こうした中、北海道建築士事務所協会は、国交省に改正案の見直しを要求する予定だ。庄司雅美会長は「新たな告示の発布により、中小の建築士事務所で減収が想定され、労働環境の悪化や人材不足の深刻化を招く恐れがある」と危機感をあらわにした上で、国交省が実施しているパブリックコメントに協会として意見を提出する意向を示した。実態調査方法の再検討や技師単価の見直しを求める方針だという。
国交省は10日までパブリックコメントを募集した後、12月に新たな業務報酬基準の告示を交付、即日施行するスケジュールを描いている。道内関係者の懸念を払拭(ふっしょく)するような新案が示されるかは、不透明な状況だ。