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北海道建設新聞社
2018/10/30

【北海道】近代建築物早期保全を 道東過疎地文化財でシンポジウム

 過疎地に眠る文化財を守るには―。道東3管内博物館施設等連絡協議会などは25日、浦幌町立博物館で過疎地での文化財保護の現状と課題に関するシンポジウムを開いた。学芸員や一般市民61人が参加。浦幌町立博物館の持田誠学芸員は、浦幌町に現存する明治時代に建てられた旧斉藤牧場事務所が文化財としての保護を受けておらず老朽化が進行していることから、早期保全に向けて問題提起した。
 浦幌町厚内にある旧斉藤牧場事務所は、1903(明治36)年ごろに斉藤兵太郎氏により建てられた和洋折衷式の牧場事務所兼住宅。明治時代の牧場事務所として現存する建築物は同事務所と札幌市内にあるエドウィン・ダン記念館の2棟のみで、歴史的に見て国の重要文化財相当の建物だという。しかし近年、同じ時期に建てられたとされる厩舎(きゅうしゃ)は積雪により倒壊。事務所自体も文化財として保護されておらず修復もしていないため、早急に保全する必要がある。
 持田学芸員は、現実問題として保全には費用面で多大な負担がかかることを強調。「小さい町で文化財の保護にお金がかけられるのか、町民の理解は得られるのか、保全を継続していけるのか、浦幌に限らず過疎地の町村が共通に抱えている問題だ」と指摘した。その上で「従来にはない形での文化財保全の方策を模索し、今、何ができるのか、何をしておくべきなのか考える必要がある」と述べた。
 基調講演では、任意団体「文化財サポート」の田才雅彦代表が国の文化財保護制度を解説。制度は、当時の姿をそのままに残す重要文化財などの「指定」と、多方面と連携し一定の広がりの範囲を保存活用する重要文化的景観などの「選定」、活用に軸足を置き改変をある程度認める登録有形文化財などの「登録」の3つに大きく分類されることを説明した。
 近代建築物の保存活用については、地域住民と専門家が一緒になり文化財を生かしたまちづくりを進めるための文化財保存活用地域計画を策定し、保全には指定、選定、登録など、どの手法が適しているか検討するようアドバイスした。(帯広)