東京都は設計等委託業務の品質確保に向けた取り組みとして、予定価格100万円超の全案件で予定価格を事後公表するとともに、建設局以外の知事部局にも総合評価(落札)方式を導入する。10月15日に開いた入札監視委員会制度部会(部会長・小澤一雅東京大学大学院教授)に取り組みの案を提示し、了承を得た。今後、総合評価方式の適用目標割合などを検討する。
都は調査や設計などの業務についても積算基準を作成し公表しているものの、予定価格については事前・事後とも公表していない。そのため、事業者にとっては、都の積算と自らの見積もりの妥当性を十分に検証することができない。また、調査基準価格や最低制限価格を設けていないため、プロポーザル方式や総合評価方式を除く価格競争による案件では低価格による応札が発生し、そのまま契約するケースも少なくない。
そこで、入札参加者に対し、積算作業を行った上で適切な価格での入札を促すことを目的に、「知事部局の予定価格100万円超の全ての設計、測量、地質調査」業務で予定価格を事後公表する。
また、総合評価方式の適用拡大については、価格以外の技術的な要素も考慮して落札者を決定することで、優良な事業者の受注機会を創出するとともに、設計等委託業務の品質を高めることが目的。建設局が2013年に試行を開始し、適用範囲を広げていることから、その運用実績を踏まえ評価項目の一部を変更し、他の知事部局の案件にも適用する。
「予定価格100万円超の設計、測量、地質調査」業務の中から事業執行局が対象案件を選択する。落札予定者の決定方法は建設局の試行と同基準とし、価格点(30点満点)と技術点(30点満点)の合計点が最高のものを採用する。
技術点の評価項目は、建設局の試行である「企業の経歴等15点」(同種・類似業務の実績3点、過去の成績評定点8点、優良表彰の実績2点、地域精通度2点、事故・不誠実な行為マイナス3点)と「配置技術者の経歴等15点」(保有資格1点、同種・類似業務の実績3点、過去の成績評定点8点、優良表彰の実績1点、CPD(継続学習)実績1点、地域精通度1点)をベースとする。企業の経歴等のうち「同種・類似業務の実績の配点(3点)」を2点に減らす一方、「企業の信頼性・社会性」に関する評価項目を選択型として追加。▽災害協定等の有無1点▽環境配慮実績1点▽障害者雇用の実績1点▽ライフ・ワーク・バランス認定の有無1点▽女性活躍1点―を評価項目として設定する。複数の項目に適合していても配点は最大1点とする。
「ひとくちメモ」
知事部局が19年度に契約した予定価格100万円超の設計等委託業務は1500件(このうち建設局756件)あり、価格競争で落札者を決定した案件が1190件(79%)、プロポーザル方式が47件(3%)、総合評価方式が263件(18%、全て建設局)―となっている。業務品質の確保と事業者の人材確保・育成に向けた取り組みとして都では、将来的な最低制限価格・調査基準価格の設定も視野に入れている。
提供:建通新聞社