「平成30年7月豪雨」により被災したインフラ構造物の被害状況を調査してきた愛媛大学大学院の氏家勲教授がこのほど、建通新聞社の取材に応じた。氏家教授は、「(防災を)土木構造物による対策だけで対応するのは難しい」とし、異常気象を起因とする災害が懸念される昨今では、水理や土質、気候変動などさまざまな被災要因を「あらかじめ考慮する必要がある」と指摘する。
被災直後の7月12日、氏家教授は大成橋の流出現場(大洲市成能)と擁壁の崩壊現場(西予市明間)を視察、被害状況の調査に当たったという。
大成橋では、豪雨の影響で肱川の流水が桁を越流し、橋脚は破断、桁は流出。橋脚破断のメカニズムについて氏家教授は、柱中間部の鉄筋強度が変わる段落とし部とコンクリートの継ぎ目の位置がほぼ重なる、「構造的に弱い部分」に強大な負荷がかかったと推察。さらに、堆積土砂による河床の上昇、流量の急激な増加といった要因も重なったとみている。
一方、西予市明間の擁壁崩壊は、従来の設計で想定されていたよりもはるかに多量の土が滑動したために起きたと分析。同地区砂防堰堤の崩壊では、土石流により砂防堰堤が転倒・倒壊、「想定を超える圧力だったようだ」としている。
インフラ構造物による防災の役割と効果を十分に評価しつつも、度重なる異常気象を前に、「さまざまな被災要因を考慮し、ハザードマップなどリスク情報を整備・把握して対策を検討する必要があるのではないか」との見解を示した。
提供:建通新聞社