県商工労働部観光企画課は「新たな観光地域づくりに係る調査報告書」をまとめた。県内の観光地域づくりのテーマと適地を選定し、開発に向けたロードマップを作成した。テーマの設定では「世界的観光地」を形成することを目指し、観光地の適地として、海をテーマとする銚子、鴨川・勝浦、南房総と、医療をテーマとする成田の4つの地域を選定。収支の概算と採算確保のための対応を示した。調査業務は日本経営システム(東京都港区西新橋2―1―1)が担当。
報告書は、民間資本の積極的な投資を誘導し、新たな観光地域づくりや既存の観光地域の活性化を図るため、県内の観光地域の課題を整理。観光地域づくりを推進していくうえでのテーマ案を設定し、民間事業者にとっての望ましい観光地域づくりのあり方を明らかにした。
海をテーマにした観光地づくりでは、高級ホテルの整備を中心に富裕層の誘客が可能な4〜5星クラスの高級ホテルを新築、もしくは既存施設のリノベーションで整備するとともに、関連施設の充実も意識し、メガヨットの寄港が可能な施設整備も想定する。
銚子地域では犬吠埼、市街地・卸売市場、マリーナ・屏風ヶ浦の3つの地域での施設整備を提案。犬吠埼地域ではホテル・リノベーション2棟、新規高級ホテル1棟、灯台前(土産物店・水族館)の複合開発、市街地・卸売市場地域では第一市場前飲食・物販施設10棟、メガヨット寄港対応(飲食・物販)1棟、マリーナ・屏風ヶ浦知己ではマリーナ・リノベーション1棟、ホテル新設1棟をそれぞれ提案。
鴨川・勝浦地域は、鴨川地域でホテルリノベーション2棟、新規高級ホテル整備1棟、ヘルスケア施設1棟、勝浦地域はホテル・リノベーション2棟、新規高級ホテル整備1棟を提案。
南房総地域はホテル・リノベーション2棟、新規高級ホテル整備1棟、メガヨット寄港対応(飲食・販売)1棟、成田地域は病院1棟(着工済)とヘルスケア施設1棟がそれぞれ提案された。
整備費は、銚子地域が467億7333万4000円(犬吠埼地域321億666万7000円、市街地・卸売市場地域13億円、マリーナ・屏風ヶ浦地域133億6666万7000円)、勝浦・鴨川地域が450億9333万4000円(鴨川地域273億666万7000円、勝浦地域177億8666万7000円)、南房総地域269億666万7000円、成田地域14億円と試算。
収支の概算では、ホテル事業の利益率が最大3・74%と低く、整備費用の回収に約28年間かかるなどの課題が挙がった。この対応としては、政策的なインセンティブを付与する必要性を指摘。必要なインセンティブとして開発規制緩和や税制の免除、観光プロモーションの支援などを挙げた。開発規制の緩和では、自然公園法による容積率、高さ制限の緩和、PFIの活用によるプライベートビーチの実現などが提案された。
観光地域づくりに向けたロードマップでは、勉強会を開催し、観光地域づくりに対する機運を醸成するとともに、各地域での推進体制を整備。また、各自治体から出される要望を取りまとめ、インセンティブの実現に向けて関係省庁への働きかけを行うこととした。