北海道建設新聞社
2018/09/14
【北海道】「絶えず挑戦する会社に」 岩崎の古口聡社長に聞く
ドローンやICT施工など先端技術がキーワードになる建設業で、古くから測量会社や土木コンサル、自治体への技術支援を担っている岩崎(本社・札幌)。最近は自動車部品メーカーのデンソーから出資を受けたり、株式上場を目指すなど、さらなる高みを視野に入れている。古口聡社長に同社の将来像を聞いた。
―2020年ごろの上場を目指している。
関係先からは、総資産や売上高など会社規模を考えると東証2部が相応だと言われているが、現状では定まっていない。
上場は人材採用とブランド強化が狙い。当社は若い人にとって魅力的な事業を展開していると思うが、就職先となると、上場企業や名の知れた会社に負けてしまう。学生の親を含め、企業に安定や大きさを求める傾向は強い。
工学系の学生で「北海道で暮らしたい」という人に入ってもらえればありがたい。ここ3―4年、志願する学生が少ないのが現状だ。
金融機関から十分融資を受けているので、一般投資家から資金調達してもらう必要はない。しかし、当社のような中小企業がステップアップするには上場会社≠フブランドが必要だと感じている。
―デンソーの資本参加については。
18年3月末に1億5000万円の出資を受け、デンソーが株主に加わった。ドローンを使った橋梁点検や3次元計測などで協業関係にあり、そうした関係強化の証として資本参加に至った。
最初の試作機から3年が過ぎ、試行錯誤の末、突風でも安定した姿勢を保つ「HDC02」を上市する準備ができた。精度の高い写真が撮れるため、橋梁点検用の写真撮影など広く平坦な面の3次元計測を早く正確に処理できる。
今後のビジネス展開に向け、社内にドローンを飛ばすための教育者と、集めた画像を処理するための専従者を2人ずつ置いている。外から取り込んだデータを点群処理して返すクラウドサービスも始める方針。将来的には、コンクリート構造物のひび割れに対し、撮影画像の解析サービスもクラウドを介して始めたいと考えている。
―近年のi―Constructionについて。
重機オペレーターや現場技術者の不足に対応するために情報化施工は不可欠。3次元で設計したり出来形計測するのは、省力化の点で大変有効と考える。
今後、トンネルや橋梁なども3次元化すれば、調査設計、施工、出来形計測、維持管理のライフサイクルを効率よく回すことができると思う。
社会インフラ基盤は国民生活、日本経済にとって必要不可欠なものであり、インフラの安全性や耐久性を効率よく維持管理するために3次元データは威力を発揮すると考えている。
―岩崎の強みは。
i―Constructionで3次元での調査、設計、ICT施工、出来形計測を一連でサポートできるのは強み。計測においてもMMC(モバイルマッピングシステム)、トータルステーション、RTK―GNSS、レーザースキャナー、UAVなど現場の状況に応じて提案できる。
絶えず新しいことに挑戦し続け、失敗を恐れないで行動する社風が背景になっている。
―今後の経営計画を。
第75(21年3月)期までの中期経営計画として売上高87億6000万円、営業利益6億6100万円、経常利益5億4000万円、当期純利益4億7700万円を掲げている。環境計測と調査設計、土木システム、情報処理の4事業のうち、環境計測の売り上げは18年3月期実績より60%超、土木システムも35%超の拡大を目指す。
―将来どういう会社でありたいか。
絶えず新しいことにチャレンジしたい。
現状でも、顧客の使う様子をイメージできないシステムやサービスは止めるが、基本的にやってみなければ分からないことはゴーサインを出している。
意思決定の早さは岩崎の特長。新しいビジネスに挑戦することと、利益重視や株主還元がメインの株式上場は真逆のベクトルだが、イノベーティブを忘れてはいけないと思う。
古口聡(ふるぐち・さとる)1959年1月30日生まれ、札幌市出身。日大生産工学部管理工学科卒、82年沖電気工業入社。85年に岩崎へ入社し、東京営業所長や取締役社長室長、専務取締役を経て、99年11月から現職。