北海道建設新聞社
2018/09/10
【北海道】札幌市内復旧本格化
大地震から一夜明けた7日、札幌市内では被害のあった道路や水道などで、建設業者による仮復旧が本格化している。断水や周辺建物にも被害が生じた清田区では、里塚地区などで被災建築の危険性を判断する応急危険度判定に着手した。全市的な停電の影響による通信障害や建設機械の燃料供給、作業員の食料、飲料不足など、制約が大きい状況の中で復旧に携わる官民の従事者は可能な限り早い復旧に向け力を尽くしている。
札幌市災害対策本部による7日午後3時現在の状況は、負傷者は軽傷207人。ライフライン関係では市内の高速道路全線で通行し、停電は一部で復旧し順次進んでいる。
公共交通機関は市営地下鉄全線と路面電車は全て営業を始め、JRは快速エアポートのみ1時間に2本程度の運行を開始した。
清田・厚別区で約4万戸に影響している断水は、7日未明に漏水箇所の復旧が完了。洗管作業に入り、遅くとも9日夕方までに復旧する見込みだ。
被害が大きかった清田区では里塚1条1、2丁目周辺では応急危険度判定に着手。判定士を含む市職員が200棟以上を回って各建物の状況を評価した。
避難所は午後4時29分時点で228カ所に6673人が避難。夜間に避難所を訪れる人が多く、午前6時段階では9274人と1万人近くに上った。
停電の長期化で携帯電話やスマートフォンの充電場所を求める人も多い。避難場所の一つ中央区の中央中に現場を構える一二三北路は、現場の発電機を充電用に提供。夜間は照明などを増やし避難者の不便を和らげた。
市道・道道では通行止めが複数箇所あり、各所で地場建設業による仮復旧作業が進められている。
現場関係者からは「停電や通信障害が管理を難しくしている」「燃料供給が長引くと重機の稼働や作業員の出勤に影響しかねない」「作業員の食料や水の確保に困る」との声もあり、制約が多い中での作業が続く。
官民ともに維持関係者の多くは5日の台風21号の風倒木除去で奔走した後、疲労が回復せぬまま、震災復旧に突入した人は多い。中には地震で自宅に被害があった人もいる。
停電の長期化が現場の疲労を色濃くするが、現場従事者の1人は「地域を守るのは私たちの役目」と、一日も早い地域の回復に力を込めた。
札幌市内では6日、北海道地震の大きな揺れで、道路陥没、水道管破断による道路被害が発生した。被害の大きい西4丁目線、東15丁目屯田通は、7日早朝から応急復旧が本格化。停電や燃料、食料不足など制約が多い中、早期の交通開放を目指した作業が進んでいる。
市内で最大の震度5弱を観測した北区では、地下鉄南北線の上を通る西4丁目線で北35条から38条にかけ、車道や歩道部が400mにわたり陥没した。
北区土木センターから応急復旧の依頼を受けた大林道路は、警備員を含め2交代40人体制の復旧班を編成。24時間体制で周辺を交通規制し、早朝からバックホーなど建設機械10台、ダンプトラック16台を使い、舗装を剥がした後、沈下部分に砕石で埋め戻す仮復旧を進めている。
現場責任者は「台風被害から連続しての復旧作業。従事者の疲労や健康を気に掛けながらできるだけ早い交通開放を目指したい」と話していた。
約4・5`にわたり断続的な陥没が発生した東15丁目屯田通は、北24条や札幌新道など一部の主要交差部を除き通行止めが続いている。北46条付近は地面下の暗渠が露出するほか、北31条付近では交通標識が傾いたままの状況が続く。
東区土木センターは7日、安田興業、東亜道路工業、三井住建道路、東舗建設、北舗、富士建設の6班体制で復旧班を組織し、作業に着手したが、復旧のめどは立っていない。
停電や通信障害が続く中での作業。同センターでは「環状通など主要交差部を優先し、できる限り早期の復旧を目指していく」と話していた。
地震によって里塚配水池送水管での漏水を原因とした断水は、7日午後4時現在で清田・厚別区の約3万6000人に影響をもたらしている。断水エリアでは16カ所の給水所が開設。札幌市管工事業協同組合は6日から清田、厚別、東の3区で応急給水活動を実施。通水は遅くとも9日夕方の見込みで、今後も断水が続く見通しから組合担当者は「明日以降も活動を続けられるよう備えておきたい」と話した。
清田区里塚1条1丁目に位置する口径500_のダクタイル鋳鉄管(1988年)が、地震によって継ぎ手部分が抜け出し、漏水が発生。平岡ポンプ場から里塚配水池への送水管であったため、配水池への水を供給することができなくなり、断水となった。
清田区の平岡地区や里塚地区、厚別区のもみじ台地区、上野幌地区など約1万5000件で断水となっている。
漏水箇所は、6日夕方から7日午前にかけて復旧が完了。7日夕方からは洗管作業に入り、濁水処理には2日ほど要する見込み。水道局では洗管作業中の使用はボイラ機器が故障する可能性があるとして、水を出さないよう呼び掛けている。
このほか、里塚配水池の断水エリア以外でも、停電により電気ポンプで送水している一部マンションなどで断水が発生。市内全域で一部の学校施設や公園、水道局施設、緊急貯水槽、緊急時給水管路で給水所を設けている。
札管協は6日から応急給水活動に参加し、7日には増員して計19班、会員企業16社が出動。7日は午前5時から平岡中央小の給水所で若杉水道、平野設備工業所、砂原設備工業の3社から計6人が活動した。
容量1000gのタンク3台を使用しているが、1つは1時間もかからないで空になる状況。平野設備工業所の渡会裕俊取締役は「誰かがやらないといけない。困っている人がいるから頑張れる」と話していた。
札幌市都市局は7日、北海道地震で地盤が液状化したとみられる清田区の一部地域で、応急危険度判定を実施した。応急危険度判定士を含む建築指導部の職員28人が14チームに分かれ、1棟ずつ診断し、3段階の判定ステッカーを貼って危険度を周知した。
判定は応急判定士の資格者が主となって外観の目視調査で実施。余震などによる倒壊や部分的な落下、転倒などの危険性を速やかに判定し、復旧までの期間の危険性を情報提供する。
全体で200棟以上を想定し、里塚1条1―2丁目、同7条3丁目の一部地域を対象に、午前から作業を開始した。
2人一組のチームで、1棟ずつ訪問。外観の傾きやひび割れ、ブロック塀、控え壁の有無などを目視で点検した。
危険度合いにより「危険」「要注意」「調査済み」の3段階の判定ステッカーを貼付し、建物の所有者に判定内容を説明した。
問題なしの「調査済み」ステッカーを貼った住宅には、現時点での調査状況のため、「余震に気を付けて」とあらためて注意を呼び掛けていた。
札幌市は7日、地下鉄全線で運行を開始した。他の2線に先行して運行再開した東西線の大通駅では、到着前から運行を待ち望む多くの人がホームに列をつくっていた。
南北線、東西線、東豊線の全線は、6日の始発から運行を休止。必要な電力が確保でき、機器の動作や試運転などを実施した結果、問題のない路線から順次運転を開始した。
午後2時20分には、東西線で3本の列車が運行開始。このうち南郷7丁目から出発した列車には多くの人が乗り込み、同30分ごろに大通駅に到着。ホームは列車に乗る人と降りる人でごった返した。
その後、午後2時50分から南北線、東豊線が運行を開始。いずれも通常と異なるダイヤで運行した。
一方、同様に6日の始発から運行を見合わせていた路面電車は、電力確保や信号機復旧、本線試運転により安全が確認され、7日に営業運転を再開。内回りは午前10時56分発、外回りは同10時51分発、ともに中央図書館前から出発した。