北海道建設新聞社
2018/09/07
【北海道】厚真で震度7 全道停電 全面復旧に1週間以上
北海道で6日午前3時ごろ、震度7の地震が発生した。震源地は胆振地方中東部で深さは37`、地震の規模はマグニチュード6・7と推定している。北海道で観測史上最大となる震度7は厚真町で記録。安平町とむかわ町は震度6強を観測した。全道で続く停電は復旧に時間がかかるほか、厚真町では大規模な土砂崩れが発生。死者、安否不明者も確認されている。台風21号の復旧もつかの間、大地震が大きな被害をもたらしている。
札幌管区気象台によると、地震は6日午前3時8分ごろに発生。陸上プレートの浅い所で発生した地震で、東北東から西南西方向に圧力が加わり、一方の断層が、もう一方に覆いかぶさる逆断層型。
午前5時40分に会見した同気象台の高橋博地震情報官は、揺れの強い地域は、家屋の倒壊や土砂災害の危険性が高まっているほか、発生から1週間程度は同規模の地震が発生する可能性が高く、危険な場所には立ち入らないないなど身の安全を守るよう呼び掛けた。
併せて台風21号の大雨で地盤が緩んでいるいるところもあると指摘。6日昼前から夕方には急な強い雨が降る恐れがあり、7日は前線の接近で降雨が予測され、土砂災害にも注意喚起した。
◇震度7▽厚真町
◇震度6強▽安平町▽むかわ町
◇震度6弱▽千歳市▽日高町▽平取町
◇震度5強▽札幌市北区▽苫小牧市▽江別市▽三笠市▽恵庭市▽長沼町▽新ひだか町▽新冠町
◇震度5弱▽函館市▽室蘭市▽岩見沢市▽登別市▽伊達市▽北広島市▽石狩市▽新篠津村▽南幌町▽由仁町▽栗山町▽白老町
◇震度5弱以上と考えられる市町村▽厚真町▽むかわ町▽日高町▽平取町▽新冠町
■北海道開発局
北海道開発局は水島徹治局長を本部長とする対策本部を地震発生時の6日午前3時過ぎに立ち上げた。現場で調査対応に当たる各開建との連絡調整と情報共有、緊急災害対策派遣隊(TEC―FORCE)の派遣要請など国土交通省本省とのやりとりをテレビ会議を通じて実施した。
6日午前8時現在、国道は37号、39号、日高自動車道など4路線4区間が通行止めになっている。453号は台風21号で土砂崩れが発生していたが、地震により別の場所で新たな土砂崩れが起きている。 河川では震源地に近い鵡川、沙流川を点検。鵡川では河口左岸築堤にクラックが発見されているほか、沙流川では側帯と堤防間に長さ50bのクラックが生じている。
苫小牧港東港のコンテナふ頭で液状化現象と舗装クラックを確認したほか、船溜まり物揚場が全体的に5a海に向かってずれており、背後地の沈下と陥没が起きている。 コンテナターミナルのガントリークレーンは通電できない状態となっているほか、マンホールから湧水も発生している。
同港西港は中央ふ頭南で岸壁エプロンが10a沈下。勇払ふ頭ではベルトコンベヤーの一部が落下している。
室蘭港では、新日鉄住金敷地内の三菱製鋼工場で火災が発生。消火活動が進んでいる。
入札契約に関しては、電気の不通により参加業者が通知を確認できる状況にないため延期を検討。公告の縦覧・参加締め切り延長といった対応も視野に入れる。
■道庁
道は、地震発生後に高橋はるみ知事を本部長とする北海道災害対策本部を立ち上げ、本部員会議などを随時開き、被害状況の情報共有を図っている。
道の説明では、震源周辺の胆振中東部地区を中心に家屋倒壊や土砂崩れが多数発生している。厚真町の吉野、東和、富里、朝日地区など広範囲にわたって大規模な土砂崩れが発生。吉野地区には40人ほどが居住しているが、倒壊した家屋の下敷きや土砂崩れに巻き込まれた住民がいるとみられる。吉野地区へ続く道道上幌内早来停線や町道は土砂崩れなどで寸断され、同地区は孤立状態となっていて、陸上自衛隊がヘリコプターで現地に向かい救助活動を進めている。さらに土砂崩れにより、富里地区では厚真川の一部が埋塞しているのを確認されている。
北電によると、地震の影響で苫東厚真火力発電所が緊急停止し、道内全域の電力の需給バランスが崩れたことが原因で他の火力発電所も停止した。その後の点検で苫東厚真火力発電所では1、2号機のボイラ配管の損傷のほか、4号機のタービンから出火が確認されたことにより、全道的な停電が続いた。
苫東厚真火力発電所の復旧には少なくとも1週間かかるとみられ、全道の砂川火力発電所をはじめ全道の火力、水力発電所の再稼働を急ぎ、電力供給再開を目指す。 電力供給がストップしたことにより道内全域の約295万戸が停電。全道で1万3000基ある信号機のうち非常発電機が付いている200基以外は消灯して、路線バスなども電力復旧まで運転を見合わせた。
交通機関は、JRや札幌市営地下鉄が停電により運転を見合わせ、新千歳空港ターミナルビル内部でも被害が発生したため閉鎖され、同空港をはじめ道内を発着する航空機は全便欠航した。
ライフラインでは厚真町全町で水道管破損に伴い断水。日高町の2000戸や栗山町、南幌町、石狩市、洞爺湖町の一部地域などでも断水している。
■札幌市
1876年の地震観測開始以来、初めて震度5以上を観測した札幌市では、地震の影響で全市的な停電に見舞われ、水道破断による断水などライフライン、道路陥没による交通障害など広い範囲に甚大な被害をもたらした。各区土木センターでは維持業者や災害防止協力会らが作業に当たっているが、全面的な復旧はめどがついていない。
札幌市は、地震発生と同時に秋元克広札幌市長を本部長とする災害対策本部を設置。午前7時30分には全基幹避難所の開設を指示。午後0時5分時点で、239カ所に、1312人が避難している。
同本部によると午後1時段階で市内の負傷者は重傷2人、軽傷136人。市は6日に続き、7日も市立小中校、児童館、ミニ児童会館の休校を決めた。
停電は復旧のめどがたっておらず、市内の道路では信号や街路灯が点灯しないなどの影響が出ている。
水道は里塚配水池の流入管路が破損。厚別区や清田区などで断水が発生し1万5000戸、3万6000人に影響が生じた。破断場所を調査中で、市が56カ所の応急給水拠点設置で対応を進めている。
市内の通行止めは高速道路が道央自動車道、札樽自動車道の札幌西インター札幌JCT間。
一般道は道路陥没や水道管破断で、東15丁目屯田通、北野里塚旧道線、里塚21号線など5路線を通行止めとした。都心の駅前通地下歩行空間や駅北口地下駐車場も閉鎖した。
東15丁目屯田通は数`にわたり通行止めとなり、北46条付近では、陥没部に地下鉄東豊線の躯体らしきものが露出。北野里塚旧道線周辺では、大規模な道路陥没があり、土砂流失など広い範囲に被害が出た。このほか西4丁目通で北35条付近の400b、厚別中央通でも120bが通行止めとなっている。
各区の土木センターや水道局に維持業者や地域建設業でつくる災害防止協会が加わり、復旧作業を続けている。
公共交通機関はJR北海道が全線運休。地下鉄、路面電車も始発から運休し、バスも運行を見合わせている。丘珠空港は北海道エアシステムが通常運行している。
札幌市消防局によると午前9時現在で、住宅被害は半壊が1棟、一部破損が2棟、土木被害2件など。都市局では、空きがある市住もみじ台団地50戸で、住宅被害者の受け入れる。
秋元克広市長は各部局に対し、給水体制の確保などライフライン支援を指示。電力供給の見通しがたっていないため、停電の長期化を想定した対応を要請。市民には「落ち着いた行動で、被害を最小限にとどめるよう協力を」と呼び掛けている。
工事・委託の入札契約では、5日開札の再入札物件や、5日に提出期限を迎える案件の期日をいったん6日まで延期した。災害の状況により、6日以降の対応も検討する方針。
■停電復旧は長期化
北電が6日午後0時15分段階で発表した道内電力需給状況によると、ピーク需要の380万`h(5日夕方時点)に対し、復旧を進めている伊達火力発電所などの供給量を合わせても290万`hにとどまり、全面復旧には少なくとも1週間以上かかる見通しだ。
火力で最大発電規模の苫東厚真発電所では、1号機(35万`h)、2号機(60万`h)で蒸気漏れ、4号機(70万`h)でタービン付近からの出火を確認。復旧には少なくとも1週間以上かかる見通し。
このため、6日早い段階での再稼働を目指し、道内の水力発電所(30万`h)と砂川発電所(25万`h)の復旧作業に着手。
また、奈井江発電所(35万`h)、伊達発電所(70万`h)、知内発電所(70万`h)を7日にも再稼働できるよう作業を進めているほか、北本連携設備(60万`h)を活用し、本州側からの電力融通に努める。
世耕弘成経済産業相は6日の会見で、北電が苫東厚真火力発電所4号機の再稼働作業中、タービン付近から出火を確認したことを明らかにした。1号機、2号機でもボイラの損傷が判明したとし、「少なくとも復旧には1週間以上かかる見通し」と話した。