徳島市水道局は、本庁舎の耐震化と前川分庁舎(旧館)の解体を今後急ぐ方針。本庁舎の耐震化については、新たな庁舎の整備も視野に検討することとし、候補地の検討も含めた基本計画の策定に本年度から着手する。また、有識者を交えた検討会議を来年1月にも立ち上げ、専門的知見を求めながら並行して計画づくりを進めていく考え。一方、前川庁舎(旧館)については早期解体に向け、解体設計などに取り掛かることにしている。
27日開催の市議会防災対策特別委員会(事前)で水道局が明らかにした。両施設は2017年度に県の耐震改修促進計画により「防災拠点建築物」として位置付けられ、耐震診断の実施と結果報告が義務付けられたことを受け、それぞれ耐震診断を実施していた。
市水道局によると、耐震診断では、各施設の最低Is値が水道局本庁舎が0・20、前川分庁舎(旧館)が0・08となり、いずれも耐震安全性の判定要件(0・6以上)を満たしていないことが判明。このため水道局本庁舎については耐震化に向けた補強計画や更新計画を含む「水道局庁舎整備基本計画」の策定に取り組む他、前川分庁舎(旧館)については速やかに使用を中止し、解体撤去に向けた対応を図ることにした。
庁舎整備基本計画の策定では、水道局庁舎の耐震改修を行う場合と改築(新設)を行う場合の建設費、維持管理費、工期などを建設手法も含め比較検討する他、建設候補地に関する都市計画法、建築基準法などの関連法との整合性や浸水、津波、土砂災害、地盤の液状化などの評価などを行う。また、20年4月からは上下水道の組織統合も予定しており、統合後の総合庁舎として、さらには防災機能を有した施設として必要な機能や庁舎規模も検討することにしている。
基本計画の策定には9月補正予算案に事業費1500万円を盛り込んでおり、予算が認められれば年内をめどに業務を外注する運び。また、計画の策定に当たっては、学識経験者や経営・建築・防災等の専門家と公募市民で構成(7人程度)する「水道局庁舎整備検討会議」(仮称)を来年1月にも設置し、各分野の専門的な見地から意見を求めながら進める。会議は4回程度開催する予定で、議会に適宜報告しながら来年の6月をめどに計画を策定することにしている。
現在の水道局庁舎は1965年10月に建築され、規模は鉄筋コンクリート造4階建てPH付き延べ2815平方b。耐震診断は宮建築設計(徳島市)が担当した。なお、同業務では、診断結果を基に新設鉄骨ブレースと新設壁、柱炭素繊維補強、壁炭素繊維補強、既存コンクリートブロック撤去・改修、バルコニー・庇(ひさし)の改修などの費用に約2億6200万円(直接工事費約1億9700万円、共通費約6500万円)の概略補強工事案も示されたが、これには工事期間中の仮庁舎借り上げ費用や移転費用、外壁補修等庁舎の長寿命化工事費は含められていない。
委員からは、築50年以上を経過している施設でもあり、コンクリートの対応年数から長寿命化の効果に難色を示す意見や改築する場合の水道料金への影響などを懸念する声があったが、水道局は、今後検討会議等で十分検討し、方向性を判断するとした他、建設に当てる費用については、企業債をできるだけ活用するため水道料金への影響はないなどとし、理解を求めた。
また、改築の場合の建設候補地の質問には、財政上から公有地(水道局所有地)が望ましいとした上で、市民の交通利便性の観点から、現本庁舎の敷地や前川分庁舎敷地など3カ所を例に挙げ、今後検討していくとした。この他、上下水道の組織統合を控えており、職員の労働条件や処遇の改善を急ぐよう、注文もあった。
一方、現在の前川分庁舎(旧館)は67年8月に建築された元商業施設で、現在は事故・災害等に備えた応急給水や応急復旧に必要な車両・資機材等の保管場所として利用している。規模は鉄骨一部鉄筋コンクリート造2階建て延べ2243平方b。耐震診断は補償実務(徳島市)が担当した。
同業務では、耐震診断結果で「鉄骨造大屋根とコンクリートブロック外壁については極めて危険な点が認められ、耐震補強が困難で、撤去や改築の抜本的な対策が必要」とされ、耐震補強工事案は提示されなかった。このため水道局は、使用を中止し立ち入りも制限することとし、今後、必要な車両・資機材等の保管場所を民間から借り上げ、速やかに解体撤去することにした。9月補正予算案には解体設計業務委託料として300万円、仮設倉庫借り上料として800万円、倉庫移転費用として300万円を盛り込み、予算成立後速やかに対応することにしている。
提供:建通新聞社