神奈川県は、県内有数の規模を誇る農業水利施設「磯部頭首工」の機能保全計画を2018年度末に策定する考え。固定堰や取水門といった構成施設について、劣化予測や対策工法、コスト算定などを行うもの。現在、県央地域県政総合センターが機能診断業務の委託手続きを進めており、8月6日に開札する予定。同センターではまた、サイホン施設についても同様の作業を進め、機能保全計画を策定することにしている。
磯部頭首工(相模原市南区磯部、厚木市猿ケ島)は、相模川から農業用水を引き込むための施設で、戦前に築造された。その後、厚木市や伊勢原市、平塚市の水田約2400fのかんがいを目的とする水利組合が1949年に設立。59年には約20`の用水路と、頭首工の堰堤下約200bの地点に相模川を横断するための伏越(逆サイホン)、沈砂池を完成させている。
64年から68年までの全面改修を経て、現在の姿となった。施設の全長は446・8b。取水門10門(左岸用6門、右岸用4門)、洪水吐(鋼製油圧自動転倒ゲート、幅30b×高さ1・3b×3門)、土砂吐(鋼製油圧ローラゲート、幅5b×高さ2・3b×2門)などで構成されている。コンクリート構造の固定堰の高さは4・3b。洪水吐の左右岸側には魚道がそれぞれ設けられている。
保全計画の策定に向けては機能診断で構造物本体、目地・継ぎ手の変状、周辺地盤の変化などを確認し、健全度を評価する。その上で、劣化予測や対策工法、対策実施シナリオ、機能保全コスト、施設監視計画などをまとめることにしている。このうち、対策実施シナリオについては、施設の状況を踏まえ、補修、補強、更新などを判断する。
これらを内容とする頭首工の診断業務は、19年2月28日まで進める。サイホンに関する診断業務の委託手続きは近く始まる見込みだ。
国土交通省関東地方整備局と県がまとめた相模川水系相模川・中津川河川整備計画によると、磯部頭首工は改築する施設として位置付けられている。河道内の土砂移動の極端な不連続性を是正するのが目的。
また、磯部床止下流の左岸堤防際の深掘れの進行を緩和するため、頭首工改築に合わせた河床形状の整正など、必要な対策を実施するとしている。
改築の内容や実施時期などは、関係機関が調整して決めることになる。
提供:建通新聞社