「平成30年7月豪雨」により愛媛県内で発生した多くの斜面崩壊について、愛媛大学災害調査団(団長・大橋裕一学長)は、局所の気象状況と地質、地形などを起因とする複合災害だったとの見解を示した。断層などから判断すると、仏像構造線の以南付近に位置する宇和島市吉田町周辺などでは、風化がかなり進んだ強風化岩盤の崩壊が多数見られたという。斜面崩壊箇所を現地で調査した報告からは、表層部の土砂流出にとどまらず層厚5〜6bの規模で岩盤が滑り崩落したと推察される箇所が多く確認できた。愛大災害調査団では詳細を把握するにはさらなる現地調査が必要としており、27日には学内の危機対策本部と調査団による合同報告会を開き、これまでの調査内容を報告するとみられる。
愛大が県建設技術支援センター、県技術士会と連携し調査した内容を20日の会見で発表した。森伸一郎准教授によると、西予市宇和町岩木で起きた斜面崩壊は源頭部で最大幅50b、最大滑り層厚6・5bにわたる大規模な土砂崩れで、滑り面の長さは実に150bに及んだ。上部から崩壊した岩石と土砂が下方の表層土を巻き込みながら崩れ落ち、土石流となって流下していったという。
吉田町小名で発生した斜面崩壊は、遠望するとみかん山表層部が滑ったように見えるが、深さ6・5bの粘板岩が風化した岩盤が一気に崩れ、みかん山ごと根こそぎ下方に滑ったと推察される。
吉田町先新浜の斜面災害は、源頭部の滑り層厚が最大5〜6bとされ、かなり風化が進んだ岩盤が崩壊、下方の表層部をこそげ落とし土石流になったとみている。
森氏は、斜面崩壊について短期間での多量の降雨が原因の一つだったと指摘する。岩盤の割れ目に強い雨が一気に入り込み、その際に生じる水圧で内部から岩が押されて崩落につながったと推察されるという。
松山市下難波では風化が進んだ強風化花崗岩の上部にある、まさ土に水が浸透して重くなった表層部が滑ったことで斜面崩壊が起きたとされる。松山市には下難波の他、別府、北吉田、高浜などに強風化花崗岩の形成が見られるという。
また、調査団が国土地理院公開の航空写真を用いるなどして崩壊した谷や沢の線を調べたところ、吉田町法花津周辺7・7平方`に限っても717カ所以上の崩壊地を確認、複数の崩壊が合流した様子も把握できたとしている。
被害の大きかった吉田町など仏像構造線以南、四万十川層群では粘板岩が多く形成され、多量の降水と混ざり泥濘化したとみられる。森氏は、当時の降雨状況と地質との関連を分析する必要性を指摘。気象と地質、地形などを要因とする複合災害との認識を示し、教訓として「場所ごとのリスク情報を事前にしっかり知っておく必要がある」と言う。
提供:建通新聞社