東京都が設置している葛西臨海水族園のあり方検討会(座長・西源二郎東海大学客員教授)は7月27日に開いた会合で、「将来を見据えた持続的な施設として再生するには、建て替えにより新たな水族園を整備すべき」とする報告書をまとめた。世界有数の大都市・東京の都立水族館は「国立に代わる水族館として、世界においては日本を、日本においては国内を代表する存在となるべき」と強調し、備えるべき機能として調査・研究や収集・飼育・繁殖、展示・空間演出など6点を提示。施設については、バリアフリーへの対応やアクセシビリティーの確保、利用者がバックヤードを安全に見学できるような計画、混雑緩和につながる動線計画などを提案した。新たな展示水槽は3000d程度を例示。都に対しては「今後のあり方の実現に向け、スピード感を持って進める」ことを求めている。
葛西臨海水族園(江戸川区臨海町6、敷地面積約8万6000平方b)は、鉄骨鉄筋コンクリート造3階建ての本館をはじめ、延べ床面積1万5780平方bの施設で構成。開園から30年近く経過して建物や設備の老朽化が進行している。設備の更新には建物の外壁面を解体する必要があり、配管の一部は建物躯体や水槽と一体化しているため、水槽を取り壊さないと交換できない箇所もあるという。バリアフリーについても十分ではない。
検討会では、こうした状況を踏まえ「老朽化やバリアフリーへの対応が困難で、将来を見据えた持続的な施設として再生するには、建て替えにより新たな水族園を整備すべき」と結論付けた。その整備に当たっては「アクセシビリティ―が確保できるよう、駐車場や最寄り駅、海側などからのアプローチを検討」するとともに、「(同水族園のある)葛西臨海公園を、利用者の気持ちが高まるようにリニューアルすることが望ましい」と提案。併せて青写真となる基本計画の策定に当たり、「質の高い管理運営実績や技術力を持つ、現在の水族園の運営者や関係者の意見を参考にすべき」との意見も付けた。
検討会が、新たな水族園が備えるべき機能として示したのは、▽調査・研究▽収集・飼育・繁殖▽展示・空間演出▽学習・体験▽レクリエーション▽環境保全への貢献―の6点。このうち展示・空間演出については、展示する生き物は「実物」を原則とし、リアリティーを追及するよう指摘。ICTや映像、照明、音響など最新技術を駆使し、生き物や生息環境の美しさ、臨場感が感じられるようにすることを求めた。展示水槽に関しては、クロマグロの性質に考慮し、突起や角のない半球状で水深6b以上の形状とし、現在の展示水槽(大洋の航海者、2200d)を上回る3000d程度の規模を例示した。
提供:建通新聞社