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北陸工業新聞社
2018/07/06

【石川】芸術祭へ4期目スタート/空き家を宿泊施設、レストランに/民間資本の活用検討/珠洲市長/泉谷満寿裕氏 

 6月の任期満了に伴う珠洲市長選で4選を果たした後、初の市議会に臨むなど新任期が本格的にスタートした泉谷満寿裕氏。昨年秋の奥能登国際芸術祭ではにぎわいづくりに成功し、2年後には2回目の芸術祭開催を目指している。「市民とともに新たな動きを生み出していきたい」と話す泉谷氏に今後の展望を聞いた。

 奥能登国際芸術祭は、11の国と地域から総勢39組のアーティストが参加し、昨年9月3日〜10月22日の50日間、市内全域を会場に開かれた。「市外や県外、海外からも含め7万1000人という多くの方々にお越しいただき、にぎわいと活気が生まれた。珠洲市の潜在力の高さ、魅力の高さをこれまでになく遠くまで広く伝えることができた」と振り返る。
 「地域の活性化を図るには、市民の皆さんが自分たちの地域に誇りを持てるかどうかがベースになる。誇りを高めるために魅力を高めることが大事。加えて一体感を高めることも大事。芸術祭はこの3つが見事に『ハマった』と思う」と笑顔を見せる。
 だが昨年の奥能登国際芸術祭では、市内で宿泊、飲食施設が不足するという問題に直面した。次回開催に向け、イベントをサポートする地域リーダーの高齢化に伴う若者の人材育成も課題になってくる。「準備期間は今年と来年しかない。これからが正念場」と力を込める。
 今後、イベントをサポートする住民らを中心としたNPO法人の組織化も検討していく。
 宿泊や飲食施設の確保へは「民間資本で空き家を借りて、リニューアルし宿泊施設やレストランにできないかと考えている」と説明する。ただ実現するためには、出資や運営に関して地域住民の協力が必要となり、ロケーションの良い空き家の発掘も容易ではない。「難しい難しいとばかり言ってはいられない。いかにスピード感を持ってやっていけるか。今年度中に芽が出ないといけない」
 「珠洲の潜在力を生かせば、いろんなことができる。U・Iターンや移住定住の促進につなげることができるというのが原点。芸術祭の開催で『泉谷はこんなことをやりたかったんだ。珠洲をこんなふうにしたかったんだ』と自分の理念を形として示すことができた」と話す。 
 今後は芸術祭を核とした地域振興策のほか、防災行政無線デジタル化や埋立処分場建設といった大型事業、学校の老朽化対策、保育所の統廃合問題も控えている。国から選定された「SDGs(持続可能な開発目標)未来都市」としての取り組みも本格化し、来春には子育て支援センターと児童館を併設した新市民図書館もオープンする。
 人口減少が進む中で「川の流れに逆行して皆で船をこいでいるのが珠洲市。そこに帆を張ってうまく風を捉えたら進んでいける。芸術祭をやることによって、後ろの滝つぼが少し見えなくなった」と、未来に向けてかじを取り続ける決意だ。

いずみや・ますひろ 1987年早大卒。野村證券勤務、実家の菓子店代表などを経て、06年の珠洲市長選で初当選した。珠洲市飯田町。54歳。

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