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北海道建設新聞社
2018/07/02

【北海道】遠軽町タスクフォース 都市再生に挑戦(下)

 部署の垣根を越え、計画案ができるまでには、上司の気遣いや、若手の積極的な姿勢があった。
 動きだした「都市再生タスクフォース」は、より意見を出しやすい環境をつくるため、10人のメンバーを、基幹事業考案グループと提案事業考案グループに5人ずつ分け、会議などを通して案を出し合った。
 ■若手の熱意 上司が肯定
 巴章匡係長がリーダーを務めた基幹事業考案グループでは、2回目の会議でメンバーに事業提案を求めた。集まったのはおよそ50案。「若いメンバーの熱意を感じた。全てを確認するだけでも大変だった」と巴係長は笑う。メンバーの若手職員たちは、町内に在住する知り合いや所属課職員に対するヒアリングなども自主的に行っており、さまざまな視点から積極的に案を考えていた。
 巴係長が強く意識したのは、出た案に対して必ず「いいね」と肯定すること。若手職員が考えてきた努力を無駄にしたくないとの思いで、自身の経験から不可能と思われる事業も、最後まで一緒に可能性を模索した。
 当時入庁3年目の下井裕人技師補は「会議で意見を否定されることはなく、まず話を聞いてもらえるので、意見が出しやすかった」といい、「一緒に考えてもらうことで、上司としての事業の見方を吸収させてもらい、職員としての引き出しが増えた」と感謝する。
 こうして日々の業務休憩時間などにも、上司と若手職員が計画案について気軽に意見交換できる雰囲気が醸成され始めた。業務時間以外にも多くの案が生まれた。
 ■中心市街にぎわい創出へ11事業
 チームは、内部だけでなく商店街関係者ら町の人々とも意見交換を実施した。ワークショップ形式の意見交換に参加した益井伸也さんは、岩見通南2丁目で102年続く益井写真館の4代目社長。「共に町の未来を担う若手職員と意見交換する機会。中心部に人を呼び込むという同じ目標に向かって、こちら側の思いも多く伝えられた」と振り返る。「同じ町に住む同世代として、今後も官民の壁を越えて協力していきたい。この活動から町が良い方向に変わるのではとも感じる」と期待をにじませる。
 先進地への視察なども経て事業選定を進め、計画案には仮称えんがる町民センターを中心とした道路整備や空き店舗再整備、イルミネーション事業など、概算事業費51億970万円、計11事業を盛り込んだ。
 6月1日に計画案を受け取った佐々木修一町長は、「若手らしい発想で多くのアイデアが出た。部署を横断する形で意見を出し合える貴重な経験だったのでは。これからも、諦めずに提案を続けてほしい」と今後の活躍も期待する。
 計画案が完成し一段落したが、巴係長は「計画した事業が実施されても、整備したものが活用され続けなければ意味がない」と今後に向けて気を引き締める。
 下井技師補は「活動を通して多くの人と意見交換をし、勉強になった。今回の計画に反映できなかった意見も無駄にせず、引き続きまちづくりについて考えていきたい」と前を向く。
 中心市街地のにぎわい創出に向けたこの活動で、若手職員は政策提案に関する多くの経験を得ている。都市再生タスクフォースから始まる挑戦は、これからも続いていく。