北海道建設新聞社
2018/06/15
【北海道】ノボシビルスク通信 住宅投資 高水準を維持
【ノボシビルスクIDA】近年、ロシア・ノボシビルスク州の建設分野にはダイナミックな成長が見られる。2017年の住宅建設は延べ床面積が172万m²で、10年に比べて約70%増えている。15年にピークの173万m²を記録し、経済に逆風が吹く中でも高い水準を維持している。17年のこの分野の総投資額は500億㍔(約875億円)だった。人々はどんな住宅にお金を出したのか。また、住宅選びに当たって何を重視したのか。指標を調べると住宅購入者の好みが見えてくる。
■間取りや周辺環境重視
17年の建設市場を詳しく見ると、ノボシビルスクでは792棟の住宅が建った。このうち90棟は9階建て以上の高層ビル、12棟は4階建て以下の低層ビルで、残り690棟は個人の一戸建てである。
専門家たちは、住宅に対する人々の考え方が近年変わってきていると口をそろえる。それによると、住まいそのものだけでなく、周辺のインフラ(学校、幼稚園、ショッピングセンター、交通機関)が重視されるようになり、こうした環境の整った郊外が人気を集めるようになっている。
一方、地下鉄駅との近さは以前と違って重要ポイントではなくなっているという。大事なことは間取りが理想的かどうか、また近所に公園か林、川などがあるかといったことで、住環境の優れた地域なら通勤時間が長くても問題視しなくなっているようだ。建設会社は市場の状況をわきまえていて、最近の開発エリアでは子どもの遊び場や運動場が整備されている。
新築マンションでは快適さが新たなレベルに達しており、屋内には広々としたロビー、最新機能を備えたエレベーター、モーションセンサー付きLEDライトが完備されている。かつては珍しかったベビーカー置き場や自転車置き場もある。有識者たちはシベリアの住宅建設市場について、価格や設備、サービスなどの点で選択肢の豊かな市場だと指摘している。
■州政府が住宅建設後押し
住宅建設は、ノボシビルスク州政府が戦略分野と位置付けて後押ししている分野でもある。州は、公務員の住宅購入支援や、老朽家屋・仮設住宅からの移住促進などを方針として掲げており、これに基づいて建設会社・不動産会社(ロシアでは両者を兼ねる企業が多い)向けの支援プログラムを打ち出している。
建設関連業者は公的支援を利用しながら、顧客のさまざまなニーズに対応している。例えば購入資金の問題だ。ほとんどのノボシビルスクの不動産業者は、資金に関して多くのオプションを用意している。具体的には古い住宅の下取りや、頭金ゼロの住宅ローンなどだ。通常なら購入額全体の30%程度を頭金として求められるが、最近は「ゼロ・ローン」などのうたい文句で、頭金不要のローンが出てきている。
こうして多くの業者が何らかの割引をするため、購入価格は安くなる傾向にある。ちなみにことし4月の集合住宅の平均購入額は333万㍔(約582万円)だった。1m²当たりの平均価格は5万8400㍔(約10万2200円)である。
なおローン金利は日本よりかなり高く、今の平均は年利約10%だ。だが銀行によっては6%程度で提供するケースもある。一例を挙げると、建設・不動産の「VIRAストロイ」社は、大手銀行との提携で5.3%のローンを可能にしている。ロシア中央銀行によるとノボシビルスク州では17年に2万3172件の住宅ローンが新たに組まれた。その総額は398億㍔(696億円)だった。ローン期間は5年―30年が一般的だが、平均すると186・4カ月(約15年半)というデータがある。
建物そのものについてはどうだろうか。よく話題になるのは壁材だ。気候の厳しいシベリアで、冬暖かく、夏涼しく過ごすため、どんな壁材を使うかが重要な問題となる。新築住宅の多くは、軽量コンクリート(モノリシック)パネル構造を採用している。
これに続くのがプレハブ構造や、ブロックとコンクリートの組み合わせだ。3番目は一戸建てによく使われる資材で、早く建てられるサンドイッチパネル、シビト(オートクレーブ処理された気泡コンクリートパネルの一種)、れんが、伝統的な木材などだ。
こうした建材のほとんどが州内で生産されている。地元企業の「アルマトン」社は、多様なサイズ・形状のパネルのほか、階段や玄関の部品など建材全般を製造している。
ノボシビルスクの有力な住宅建設業者としては、前述の「VIRAストロイ」社や「建設イニシアティブ」社、「キャピタルインベストNSK」社、「ストリジー」社などがある。17年、各社はそれぞれ延べ床面積4万―5万5000m²の新築住宅を供給している。