建通新聞社
2018/05/21
【大阪】大和川総合治水で新たな対策 対策協で了承
国土交通省近畿地方整備局と奈良県、大和川流域の市町村で構成する大和川流域総合治水対策協議会は5月17日、奈良市内で会合を開き、より充実した内水対策として新たな「ためる対策」に取り組む方針を了承した。昨年10月の台風21号で大規模な浸水被害が発生したことを受け、同県が打ち出したもので、市町村と連携して貯留施設整備など必要な内水対策を今後3年間で仕上げる計画だ。
新たな「ためる対策」は、奈良県平成緊急内水対策事業に位置付け、雨水貯留浸透施設、ため池の治水利用、ため池の保全、防災調整池による流域対策と、ダム、河川改修、遊水地による治水対策を総合的に実施。当面は、各支川の対策に必要となる貯留施設などを適地に整備していく。
対象は全支川(県管理河川)での内水被害地区。県がまとめた流域対策の取り組み状況によると、雨水貯留浸透施設については現在、生駒いかるが・平城圏域となる生駒市、三郷町で整備中、大和郡山市(別に水田貯留を検討中)、斑鳩町、曽我葛城圏域の葛城市、河合町などで検討中。ため池治水利用は布留飛鳥圏域の田原本町で対策中、生駒いかるが・平城圏域の奈良市、斑鳩町で検討中などとなっている。
台風21号では、大和川流域で最大1時間降水量約20_(柏原上流域平均累加雨量約260_)を観測。1962年の大水害を超える水位を記録し、柏原市、奈良県王寺町、三郷町で溢水(いっすい)、家屋浸水、道路冠水が発生するなど、県内の浸水被害は床上119棟、床下387棟に及んだ。
冒頭、あいさつに立った近畿地方整備局の池田豊人局長は、「昨年の台風では大きな被害が発生した。残る対策工事を急ぎたい。また、いざというときには逃げることも肝心。その判断のためには水位計が必要だが、最近はコストも下がり、設置も簡単になった。本年度は県で66カ所、直轄で41カ所の設置を予定している」と話した。
奈良県の荒井正吾知事は、「今日の会合は新たな内水対策へのキックオフ。市町村と連携して、今後3年間で県内の内水対策を完璧に仕上げる」と強調。併せて、「補正予算の確保を念頭に、貯留施設整備などで必要な用地買収を急ぎたい」とした。県は、今後の浸水防止対策について床上で50億円、床下で60億円の事業費を概算する。