3月の任期満了に伴う輪島市長選で新人との激戦を制し、4選を果たした梶文秋氏。4期目の任期がスタートし、1カ月が経過した。今年度からは懸案事項の老朽化した本庁舎の整備に関する議論が本格化する。ソフト面でも観光入り込み客数の増加に向けた施策の強化も必要となってくる。梶氏に今後の展望を聞いた。
4年間で方向性を
河原田川沿いにある市役所本庁舎は1973(昭和48)年に建てられた。耐震基準に適合しておらず、震度6強〜7程度の大規模地震に備え、早急な対策が求められている。昨年度に専門家らで構成する「本庁舎等整備審議会」が設置され、文化会館も含めた検討がスタートした。「審議会で改築か耐震化、あるいは移転になるかなども含め、結論を注視したい」と話す。
文化会館は、ホール棟の耐震性に問題はないものの、図書館や教委などが入る事務所棟が耐震基準に適合していない。庁舎と図書館機能の併設といった整備の可能性もあるが「審議会でじっくり練っていただかないと、答えは見えてこない」と述べる。審議会からは今秋をめどに答申を受ける見通しで「この4年の間に方向性を定めなければとの思いはある」。
文化財をPR
交流人口拡大に関してはこれまでも「観光と漆器が大事だ」と言い続けてきた。今後は、地域の観光ツールにさらに磨きをかけるため、文化財を活用したPRに知恵を絞る。「『輪島の海女漁の技術』が国の重要無形民俗文化財になった。『北前船の里』で輪島もおそらく日本遺産に認定される。『アマメハギ』と『面様年頭』も国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されるだろう」と期待を寄せる。
さらに、2011年から5年間、年間漁獲量が日本一となったフグの料理や加工品も広く発信していく。「海の恵みや、歴史の深さを顕在化できるようにしたい」と意欲を見せる。
輪島の価値
中心市街地のアクセス向上では「都市計画道路本町宅田線の未着工区間の整備を進めたい」と話す。河原田川に架かる国道249号の「新橋」で計画する歩道橋は「県との十分な調整が必要」という。このほか、松陵、上野台、三井の3中学校を統合した輪島中の新校舎が2月にしゅん工し、市内全小中学校の耐震化が完了した。今後は老朽化している「三井、河原田、大屋小の3校が課題」との認識を示す。
市長選で争点となった門前町大釜で計画される民間事業者による産業廃棄物最終処分場は、夏ごろまでの着工が見込まれ、行政の役割として監視体制を整え、責任を果たしていく。
今後も少子高齢化が一層見込まれる奥能登地域にあって「人口が減ったからといって、悲観はしたくない」と言い切る。先人が残した地名「輪島」の価値を胸に、魅力あるまちづくりにまい進する決意を滲ませた。
かじ・ふみあき 輪島高卒。輪島市職員を経て、91年から市議、98年から旧輪島市長。06年3月、新輪島市長に就任。奥能登広域圏事務組合組合長。69歳。