東京国立近代美術館工芸館移転整備工事の起工式が8日、金沢市出羽町の建設地で石川県や金沢市、文化庁、独立行政法人国立美術館、県選出国会議員、県議会、市議会、工事関係者ら約110人が出席して行われ、日本海側で初となる国立美術館の誕生に期待を寄せた。
はじめに谷本正憲知事が「東京国立近代美術館工芸館の移転は、政府関係機関の地方移転、日本海側初の国立美術館として藩政期から本県の美術工芸品を扱う県立美術館、暮らしに生きる伝統的工芸品を扱う伝統産業工芸館と併せ、ここ兼六園周辺文化の森に日本の工芸の全貌を一堂に鑑賞できるエリアが誕生し、本県の文化の土壌にさらなる厚みを加えると同時に、金沢の都市としての風格を高める」と式辞を述べた。
山野之義金沢市長は「現在の東京国立近代美術館の建物、工芸館展示室の設計者は金沢市名誉市民第一号の谷口吉郎先生で、日本の工芸の拠点が金沢、石川に来ることで本市の工芸の魅力にさらなる厚み、深みが増すとともに、金沢美術工芸大学の学生や卯辰山工芸工房の研修生など多くの工芸作家、担い手の技術力向上、すそ野の拡大につながる。世界中の人に足を運んでもらえる気運の醸成に努めたい」と強調。国立美術館の柳原正樹理事長が「金沢の地で日本全国、或いは世界に発信できるような工芸の館になるよう、まい進していきたい」と決意を示した。
来賓として元文部科学相の馳浩衆院議員が「県民や国民に親しまれる愛称、バーチャルリアリティを活用し、工芸作品の経緯や歴史、作家の思いなどを紹介できる展示の工夫も必要。東京から金沢に移した意義、新たな機能を付加し、日本海側で初めての国立美術館として、金沢美大や卯辰山工芸工房で次の工芸の世界を担う人材にネットワークし、新たな触発をして頂きたい」と述べた。宮田亮平文化庁長官のあいさつを藤原章夫文化部長が代読し、作野広昭県議会議長、黒沢和規金沢市議会議長が続いた。
谷本知事、山野市長が杭打ち初めを行い、不破大仁県議会総務企画県民委員会委員長の発声で乾杯した。
起工式に先立ち、施工者主催による安全祈願祭が挙行され、神事では谷本知事と山野市長が鎌入れ、設計者を代表して山岸建築設計事務所の山岸敬広社長が鍬入れ、施工者を代表して真柄建設の真柄卓司社長が鋤入れしたほか、順に玉ぐしを捧げて工事の安全を祈った。
同工芸館の建設規模はRC造一部S造・W造地下1階、地上2階建て延べ3072・22平方メートル(うち美術館棟及び管理・収蔵庫棟2995・84平方メートル)。整備にあたり、旧陸軍第九師団司令部庁舎と金沢偕行社を解体した上で移築、活用する。
工期は2019年10月31日まで。開館に必要となる展示室や収蔵庫が適正な環境となるまでのからし期間を経て、20年の東京オリンピック・パラリンピック開催期間中のオープンを予定している。
設計は山岸建築設計事務所(建築)、浦設備研究所(設備)。施工は、真柄・高田・共栄特定JV(建築)、岡・本田特定JV(旧陸軍金沢偕行社)、長坂・川元特定JV(旧陸軍第九師団司令部庁舎)、米沢・北菱特定JV(電気設備)、柿本・第一電機特定JV(空調設備その1)、北菱・アムズ特定JV(空調設備その2)、鈴木管工業(給排水衛生設備)、柿本商会(自家発電設備)が担当する。