京都市は、中京区の元離宮二条城の本丸御殿保存修理工事について、30年度から玄関・御書院・御常御殿の修理工事に乗り出す。
3月26日開催の第16回京都市元離宮二条城保存整備委員会で市が報告した。
本丸御殿保存修理工事は、重要文化財(建造物)二条城本丸御殿玄関、御書院、御常御殿、台所及び雁之間の4棟について、29〜33年度を工期として、破損木材の取替えや屋根瓦の葺替え、壁の塗り替え等の工事を行うとともに、21〜22年度に実施した耐震調査の成果を踏まえ、柱間に耐震壁、小屋裏に水平筋違を設置するなどの補強を行うもの。
30年度は第2期工事の2年目として、本丸御殿台所及び雁之間の修理(2ヵ年計画の2年目。施工は伸和建設)で29年度に引き続き、屋根葺替え、左官工事、補強工事などを実施した後、素屋根を解体して工事を完了させる。工事完了後、台所のスペースを障壁画修理の作業所・仮保管所として利用する。
本丸御殿障壁画の修理(5ヵ年計画の2年目)は御書院の46面、御常御殿の15面の計61面を修理する。
11月から本丸御殿玄関、御書院、御常御殿3棟の工事に着手する予定(4ヵ年事業の1年目)。事業規模が大きく、市会で承認後に本契約となる。30年度は素屋根の設置を行う。
全体工期は29年8月〜34年3月(56ヵ月)。本丸御殿台所及び雁之間の工期が29年8月〜30年10月(15ヵ月)、本丸御殿玄関、御書院、御常御殿の工期が30年11月〜34年3月(41ヵ月)、本丸御殿障壁画(4棟分)の工期が29年8月〜34年3月(56ヵ月)。
工事内容は、仮設工事、基礎工事、木工事、構造補強工事、屋根工事、左官工事、建具工事、金具工事、塗装工事、障壁画修理、雑工事。
仮設計画では、玄関仮設足場、御書院仮設足場、御常御殿仮設足場を30〜33年度に設置する。
本丸御殿工事完了後の御殿公開に向け、29年度に公開計画をまとめ、30年度から基本設計に着手する。
安全かつ快適な観覧環境の確保(バリアフリー)と誰にとっても分かりやすい案内設備及び案内業務の運営体制の充実を基本に、公開計画をまとめ、30年度の基本設計、31年度の実施設計を経て、32・33年度に公開のための工事を実施する予定。
整備内容は、内部が養生、空調、什器、電気(照明、コンセント)、防犯カメラ、配線(照明用配線、コンセント用配線、防犯カメラ用配線)、外部がトイレ、下水管、上水管、電気埋設、防犯カメラ。
今後の保存管理、整備、公開計画等の計画をまとめた「二条城史跡等保存活用計画」については、29・30年度の歴史調査を踏まえ、国の補助事業として30・31年度にわたり計画を策定する。二条城保存整備委員会記念物部会の下にワーキングループを設け、コンサルタントによる計画案に対し助言等を行う。
番所は将来の重要文化財指定を見据えつつ、大幅な改変をすることなく必要な耐震補強を行い、ガイダンス施設として活用する考え。
29年度は耐震診断を実施(担当は京都空間研究所)。30年度は耐震補強工事及び設備工事に係る実施設計を進め、31年度に工事を行い、完了後に供用開始する。
現在の総合案内所は仮設工作物として市許可(31年3月9日まで)で設置しており、常設については史跡等保存活用計画を策定する中で検討する。このため、計画の策定期間及び常設設置までの期間(31年3月10日から3年間)は国許可の現状変更で現在の仮設案内所を存続させる(文化庁協議済み)。
二条城の魅力発信に係る整備について、本丸庭園の園路は路面が痩せて水たまりが生じる状態となっているため、舗装材料の見直しを検討しながら改修する。
城内通路は砂利敷きのため車いす等の通行に支障があり、これまでも改善の意見が寄せられていることから、通路環境の改善に向けた調査を行う。
城内の桜は樹勢の衰えたものが多く、かつての400本が300本に減っている状況。今後5ヵ年かけて年9本のペースで植え替えていく。他の樹木も増やしていく考え。
本丸東橋高欄はゆるみが大きくなったため、昨年応急措置を実施したが、経年破損が進んでおり、一部の部材は残しつつ取り替える。
押小路通南側飛び地の周囲には管理用フェンスを設置する。
御清所や土蔵はこれまで内部公開していなかったが、二条城の魅力発信のため、御清所では畳の表替え、土蔵では照明設備等の設置を行う。
また31年4月1日から二之丸御殿観覧料400円を新設するとともに、年間パスポート(1年2000円)を新たに設ける。
このほか保存整備委では、26年9月〜29年3月に実施した東大手門保存修理工事(施工は社寺建築木澤工務店)、27年12月〜29年6月に実施した番所保存修理工事(施工は社寺建築木澤工務店)の完了などを報告した。