高松市は、玉藻公園内にある重要文化財の披雲閣(旧松平家高松別邸)耐震化に向けた補強工法案を公表した。
今回、同案を策定したのは同施設内で最も耐震性が低いとされる蘇鉄の間(延べ床面積約230平方b)が対象。補強案として、「鉄骨フレーム設置案」と「添え柱と耐力壁増設案」の2案を提示した。
鉄骨フレーム案は、庇(ひさし)を支える柱通りに鉄骨フレームを設置し、バットレスのような形状で建物本体を補強する。内観と外観の意匠に影響を与えないように、縁側の柱通り、縁側庇(ひさし)面、天井裏に補強材を配置、できるだけ補強材が目立たないよう配慮する。補強鉄骨の柱脚には、浮き上がり防止の基礎が必要だが、鉄筋コンクリート基礎と鉄骨の基礎はりを地中内に埋めて地上に補強材が見えないようにする。
「添え柱と耐力壁案」は、木の柱を建物本体外側の柱に添えることで柱の折損を生じないようにし、現状の小壁の性能を有効に利用する。外側の一部と縁側の下に補強壁を追加し、せん断耐力を増す。内観と外観の意匠に影響を与えないように、外壁通りの外側に添え柱を追加、柱の折損を生じないようにさせ、既存の小壁の耐力をより使用できるようにする。意匠上支承の少ない北東、南東の角、縁側の下に耐力壁を追加し補強材ができるだけ目立たないように配慮する―としている。
同案は、耐震補強策を協議する専門家会議「史跡高松城跡整備会議建造物整備部会」で示されたもの。鉄骨フレーム案を中心にさらに検討を進め、具体的な工法を決める。
スケジュールは、蘇鉄の間については2017〜18年度中に具体的な耐震工法を決める。19年度に実施設計、20年度に着工する予定だ。
その他の室内耐震化計画は、18年度に大書院他、19年度は杉・松・藤の間などの耐震診断と工法検討を実施、19年度末までに施設全体の耐震診断調査と耐震化の工法検討を完了する。
披雲閣の規模は、波の間が木造2階建て、その他が平屋で総床面積は約1693平方b。施設は大書院、蘇鉄の間、杉・松・藤の間、事務所など10棟で構成、廊下で連結している。木造トラス工法により屋根を支え、柱が細く壁が少ない開放感を持つのが特長。12年に国の重要文化財に指定された。場所は玉藻町三の丸地内。
07年度の耐震診断において、大地震での施設倒壊の恐れがあるとの結果が判明、耐震化事業計画は11年に一部改定した「史跡高松城跡保存整備計画」に基づき進めている。
提供:建通新聞社