熊本地震から1年9カ月。住宅を失った人の住まい確保に向けた災害公営住宅建設が始まった。1月30日、宇城市の響原団地で安全祈願祭、宇土市の境目団地で起工式があった。建築本体工事への着手は県内で初めてという。12市町村約1700戸の建設工事が本格始動する。
■宇城市響原地区
響原地区では、施主の宇城市、発注業務を請け負った都市再生機構(UR)九州支社、設計者のシーラカンスK&H、施工者の橋建設、地元代表など45人が出席。地鎮の儀や玉串奉奠などを行い、工事中の安全を祈った。
宇城市の守田憲史市長は「被災した市民の住まいの確保は急務。団地の着工にこぎ着け、仮設住宅の入居期限を待たず完成の見込みが立った」と関係者に感謝の言葉を述べた後、「早期完成と、工事の安全を心より祈念する」と挨拶した。
このほか、宇城市議会の入江学議長が「市の復興の第一歩として象徴的な施設」、UR九州支社の西周健一郎支社長が「何よりも安全第一=Bそして一日も早く被災された皆様が安心して暮らせるよう、職員一同、全力を尽くしていきたい」、橋建設の橋溥明社長が「災害を受けられた方々が一日も早く元通りの生活に復旧されるよう祈念する」と語った。
響原団地は、W造長屋造り10棟・20戸(2LDK13戸、3LDK7戸)の住宅と、集会所を整備する。完成は2019年1月頃を予定している。
■宇土市境目団地
境目団地の起工式には、事業者の宇土市、発注(受託)者の県、設計者の龍・西山JV、施工者の中村・昭和JVと、地元代表らが出席。神事を執り行い、工事期間中の安全を祈願した。
神事のあと、元松茂樹市長は「槌音が、未来の復興の音に変わることを心から願う」と挨拶。2回目の入札で天草の業者が受注したことについては「熊本地震の爪痕は大きく、特に建築工事は厳しい状況。このような中で、宇土市に力を貸して頂き有り難く思う」と感謝の言葉を贈った。
中村建設の池ア一彦社長は「今回の工事に関われることを誇りに思う。被災者が安心して暮らせる住宅を一日も早く建てたい」と決意を述べた。
団地は、W造平屋の長屋形式(1棟当たり2〜4戸)で、住宅25戸と集会所1棟を建設する。県のくまもとアートポリス事業で設計者を選定。各住宅とも玄関横にリビングを配置し、裏側に縁側を設けるなど、周辺住民とコミュニケーションしやすい造りになっている。完成は11月頃の予定。
=県内で約1700戸を計画=
1月30日時点での県内の災害公営住宅計画戸数は、熊本市が2地区約160戸を追加したため昨年末と比べ増加し、約1700戸となった。整備手法は自治体発注のほか、都市再生機構(UR)や県への委託、民間による公募型買取など様々。
100戸を超えるのは、益城町680戸、熊本市310戸、宇城市200戸、御船町100戸。益城町はUR、県、買取の3手法を採用し、買取分については近く業者を決める。全て直接建設する熊本市は、白藤と舞原について建築工事の発注を終えており、工事が本格化する。URに委託している御船町は、基本計画策定業務を進めている段階だ。
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