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北陸工業新聞社
2018/02/01

【富山】確保へ早期避難率向上を/想定津波高全国一大西黒潮町長が講演/建設業協会青年部/「防災進め、幸せなまちづくり」

 富山県建設業協会青年部(開章夫部長)の2018年「新春講演会」が1月30日、富山市の富山第一ホテルで開かれた。後援は東日本建設業保証富山支店、富山県建設技術センター。
 この日は会員や来賓など約150人が参加。開会に当たり、開青年部長が、「近年、全国で自然災害が多発している。富山県で大きな地震や災害はないが、今後起きないとは限らない。災害が発生した場合に、われわれがどういった役目を果たし、どうやって地域と連携を取っていくべきかを考える機会になれば」とあいさつした。
 講師は、高知県黒潮町の大西勝也町長(45)が務め、「南海トラフ巨大地震といかに向き合うか〜想定津波高全国一の町の取り組み〜」を演題に、一人の犠牲者も出さないための防災思想、役場・地域・住民が一体となった地域づくりについて詳しく語った。
 大西氏は、2010年4月に町長就任。講演ではまず、東日本大震災発生から約1年後の12年3月31日、南海トラフ巨大地震による震度分布・津波高の推計が内閣府と高知県から公表され、「黒潮町には最大震度7、予想される津波34・4メートル、高知県沿岸の到達時間2分と、全国で最悪の被害想定が突き付けられた」と説明。町長として最初に、「訓示による組織の意思統一を図り、言論統制などの対応を行った」と語った。
 続いて、「人員不足に対応するため、役場の全職員(200人)を防災担当に任命し、職員研修をスタート。各地域に入り、住民とのワークショップを繰り返してきた」と報告。
 避難行動が困難な人にも対応し、犠牲者ゼロを達成するため、住民一人ひとりに合わせた避難計画「戸別津波避難カルテづくり」の取り組みも説明し、「地区懇談会は176回、参加者は2384人(62・89%)に上り、カルテ回収率は100%だった」と述べ、「課題を細分化したことで、問題が単純化・具体化することができた」と解説。「一番効果が高かったのは、カルテの記入作業により記憶が定着し、「そのとき」の行動に作用することができたこと」と説いた。
 また、「津波避難空間の確保と早期避難率の向上、建物の耐震化、訓練などによる避難速度の向上により、死者数を限りなくゼロにすることを進めている」と話し、「人命の確保のためには、早期避難率を高めることが大事」と強調した。
 防災の日常化に向けたシフトチェンジとして、「行政がリードしてきた構造を段階的にシフトし、住民の主体性による地域社会の健全化を目指している」と説明した。
 一方、100年に1回の津波被害を語り継ぐことの困難さを指摘し、「今を生きる自分たちが、どうするべきかが問われている」との考えを示した。
 これまで進めてきた内部統制、体制整備、課題の細分化、対策の具体化の先には、「幸せ、ハッピーがある」と述べるとともに、「黒潮町では防災意識が高まってきたが、皆さんもたまには、命について見つめ直してほしい」と助言した。
 最後に、大西町長が社長を務めている第3セクター・黒潮町缶詰製作所、サッカーによるスポーツツーリズム推進事業、「世界津波の日」高校生サミットの実施状況を紹介した上で、「防災の課題を一つ一つ解決しながら、幸せになるまちづくりを進めていきたい」と結んだ。

hokuriku