東京建設業協会(東建、飯塚恒生会長)は、1月24日に行われた東京都入札監視委員会制度部会(部会長、楠茂樹上智大学大学院教授)との意見交換で、「魅力ある工事は一概に言えないが、“魅力のない工事”は『安い、短い、難しい工事』だ」「中小事業者からは『JV結成の義務付けがないと“声掛け”をしてもらえない。教育面からもJV参加が必要』という声が出ている」と答えた。その上で、こうした課題を補うのが入札契約制度の多様性であり、「工事の規模や内容に応じて予定価格の事前公表やJV結成義務、地域要件の設定などを柔軟に適用すべきだ」と指摘。制度部会から質問のあった、入札参加者の増加につながる“魅力ある工事”や、JV結成義務を復活させる理由などについても意見を交換した。
東建側は、都の入契制度改革について▽積算に必要な情報のさらなる提供▽見積期間の延長▽予定価格事後公表の一部見直し▽都内中小事業者が参画するJVへの総合評価方式での加点措置拡充▽議会付議案件や地理的条件でJV結成が必要な案件でのJV結成義務の復活▽1者入札中止の廃止―などを要望した。
これに対し制度部会は、予定価格を事前公表に戻す必要性を尋ねた。
東建側は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を控え、都内では公共・民間ともに一定の工事量があることから「中小事業者では人手不足から現場を担当する技術者が休日に出勤して積算するようなケースが見受けられる」と背景を説明。
制度部会が投げ掛けた「中小事業者が任意でJVに参画することは制度上可能だ。あえて結成義務の復活を求める理由を知りたい」との問いには、「中小事業者からは『義務付けがないと“声掛け”をしてもらえない』『(技術者の)教育面からも(JV参加が)必要』という声が出ている」と伝えた。
制度部会からは「入札に参加したくなる“魅力ある工事”とはどのような条件を指すのか。発注が平準化されれば解決するのか」との質問もあった。
これに対し、東建側は「発注時期よりも(同じ時期に同じ工種の工事が一斉に行われることがないよう)施工時期の平準化が必要」「“魅力ある工事”とは、適切な利益を確保でき、週休2日などに対応できる工期設定がなされていること」などと持論を展開。その上で、「魅力ある工事は一概に言えないが、“魅力のない工事”は『安い、短い、難しい工事』だ。これを補うのが入札契約制度の多様性であり、工事の規模や内容に応じて予定価格の事前公表やJV結成義務、地域要件の設定などを柔軟に適用すべきだ」との認識を示した。
東建側の要望に対して都も回答した。見積期間の延長については「試行の状況を注視しながら、案件に応じて適切な期間の設定に努めていく」、総合評価方式に対する加点措置の拡大に関しては「(既に意見交換に参加した)他団体からも同様の要望を受けており、試行の状況を踏まえて検討していく」と述べた。 さらに、都が公表している設計図書などが、国や他の発注機関に比べ十分ではないとの指摘に対し、「積算の基となる情報の充実に取り組んできたつもりだが、指摘されたような事例があるのは反省すべきこと。契約部門だけではなく、発注部門(技術部門)にもこうした意見があることを伝え、対策を講じていく」と答えた。
提供:建通新聞社