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北陸工業新聞社
2018/01/22

【福井】第4回ふくい建築賞/暮らしや景観、積極性たたえ/審査委員五十嵐啓氏が総評(上)

 第1回目より3年間審査委員を務められた吉田純一先生、高嶋猛先生に代わり、福井大学の西本先生とともに審査委員をお請けしました。大変微力ではありますが、両先生の築いてこられた精神を受け継ぎ、精一杯務めさせていただくつもりです。
 審査委員をさせていただく時には、毎回審査基準をどこに置くかに大変悩ましい時間を費やす。今回の審査にあたり、自分なりに設定した基準は以下の通りとした。
 「ふくい」と名のつく賞であることから、その建築が地域の暮らしや景観、歴史や文化に対し何らかの積極的な関係性(それが肯定的であっても批判的であっても)を持ったものであること。もうひとつは、その建築に関係して行われる日々の営みに対して、刺激なり歓びなりをもたらしているものかどうか。という2点を求めたいと思った。
 実施物件であるから簡単にできることではない要求かも知れないとは思いつつ、そこに挑む姿勢をもった作品だからこそ「賞」の名に値するのではないかと思う。
 一般建築部門での応募作品は10点であった。その中から緑ヶ丘保育園、鯖江公民館、まちの駅(旭座+付帯施設)、ポケット・デイリーストアー、さくらstudio、きんせんクリニックの6作品が2次審査に進み、2日間の現地審査を経て、まちの駅(旭座+付帯施設)、ポケット・デイリーストアー、さくらstudioの3作品が選考された。規模のみならず作品の諸条件が全く異なる中での選考に本当に悩んだが、現地審査でお聞きできた使用する立場の方々からの意見は大いに参考になった。この賞が設計者、施工者、施主のそれぞれに与えられるという意味合いを尊重しての評価と考えている。
 最優秀賞の「まちの駅(旭座+付帯施設)」は、他の作品と大きく背景が異なっていた。明治期の木造建築物の保存再生には、最終的に関わった設計者以外にも多くの方々の献身的な努力と深い洞察があったからこそであり、意義深いプロジェクトであると評価した。地方都市の活性化を担う、重要でかつ継続的なかかわりが求められる施設である。運営というソフト面の充実があってこその小浜市の活性化であり、今回の受賞が少しでもお役に立てれば幸いである。ただ、建築計画として見た時には、広場を含めた3ゾーンの連携に関して日常への視点に対する議論がやや疎かになっていたのではないかという印象が残った。

hokuriku