東京都財務局は12月20日に開いた入札監視委員会(委員長・楠茂樹上智大学大学院教授)に、入札契約制度改革の最新の試行状況として、不調の発生率が前回(11月)報告を上回る20・1%に達したことや、低入札価格調査制度の対象となった24件全てで調査対象者が失格となり、このうち5件の契約を中止したことなどを報告した。1者入札中止の発生率は前回報告を下回ったものの18・5%、全体で46件に上っている。
入札契約制度改革の実施方針に基づく制度改革として、@予定価格の事後公表AJV(共同企業体)結成義務の廃止B1者入札の中止C低入札価格調査制度の運用範囲の拡大―の四つの柱に沿って、6月26日以降に開始した財務局の試行状況を改めて報告。11月30日現在で公表済みの案件342件、希望締め切り済み324件、開札済み199件を対象としている。
予定価格の事後公表に伴う平均落札率(予定価格に対する落札額の割合)の推移については、前年度(公営企業部局を含む都庁全体)の91・6%を2・3ポイント上回る93・9%となった。落札率が99%以上の案件の割合は、4・6ポイント減の8・8%となっている。前年度は落札率90%前後と99%前後の両極に集中していたが、その山がなだらかになっているという。
不調発生率は前年度の10・2%(財務局案件は9・9%)を9・9ポイント上回る20・1%に達した。道路舗装の不調はなく、建築は10・0%(前年度13・8%)と前年度を下回ったが、道路舗装以外の土木が20・0%(前年度9・2%)、設備が21・9%(同9・6%)と大幅に増加している。
JV結成義務の撤廃に伴う混合入札の試行では、希望申請を締め切った105件のうち希望者がJVのみが5件(全体の4・8%)、JVと単体が39件(同37・1%)、希望なしが5件(同4・8%)で、単体のみが56件(同53・3%)に上った。単体での希望者の内訳は大企業が43・5%、中小企業が56・5%だった。開札済みの45件を見ると、JVの落札が12件(同22・2%)、単体が33件(同61・1%)、不調が9件(同16・7%)で、中小企業が単体で落札した案件が19件あった。一方、入札参加希望者数の平均は前年度の2・5者を上回る4・9者に増えた。
1者入札の中止については、対象となる249件のうち46件(18・5%)で希望者が1者以下だったため手続きを中止した。中止案件を業種別に見ると、建築が7件(全体の25・9%)、土木が11件(同16・2%)、設備が28件(同18・2%)となっており、建築での発生割合が大幅に増えた。中止案件の再発注による影響として、開札日の遅れが平均41・9日、工期の遅れが平均17・4日となっている。
低入札価格調査制度に関しては、適用対象案件84件のうち調査基準価格を下回って調査を実施した工事は28・6%に当たる24件あり、全ての案件で調査対象者が失格となった。
入札監視委員会ではこの報告を基に、2018年1月に建設業界団体へのヒアリングを実施し、3月末までに検証結果を取りまとめる。その後、改めて業界団体へのヒアリングを行った上で、都政改革本部会議に検証結果を報告し、同本部が必要に応じて制度の見直しを検討する。
提供:建通新聞社