神奈川県は、酒匂川の土砂環境を回復・保全するための目標や対応策を示した「酒匂川総合土砂管理プラン」を改定する。2018年度からの5年間を対象とし、ダムや河川での土砂堆積、河床低下などに対応する。また、ダムの堆積土砂を下流の河川内に置き、水の力によって流す「置き砂」を新たに試行する方針だ。この他の取り組みでは、三保ダム貯水池の浚渫、排砂施設の調査・検討、透過型砂防堰堤の整備などを盛っている。
改定素案をまとめたもので、今後、パブリックコメントなどを経て、18年3月に計画が改定される見通し。
酒匂川水系では、三保ダムや飯泉取水堰などでの土砂堆積、河川の河床低下、海岸の侵食といった課題が以前から指摘されていた。また、10年9月には、台風9号が上流の山腹崩壊をもたらし、河川内に大量の土砂を流出させた。
こうした状況を受けて、県は現行プランを13年3月に策定。森林の保全・再生、砂防堰堤の整備、ダム貯水池の浚渫、河川の堆積土砂除去など、現行プランの期間(13〜17年度)を第1段階として位置付けた、これまでの取り組みは一定の成果を上げてきたという。
改定素案によると、18年度に始まる次期期間(第2段階)は、流出土砂の抑制、流下断面の確保、ダム貯水池の容量確保、河川管理施設の安全性確保といった目標を掲げて取り組む。
この目標達成に向けては、土砂生産域、ダム域、河道域、海岸域のエリアごとに対応策を講じていく。土砂生産域では透過型砂防堰堤などの整備、ダム域ではダム貯水池の浚渫や排砂施設(排砂ゲート、トンネル)の調査・検討といったものだ。このうち、排砂トンネルについては、多大な事業費が想定されることから、今後の技術発展を踏まえ、また、経済性や実現性などを勘案した上で調査・検討を行うとしている。
河道域では、「置き砂」に新たに取り組む。三保ダム下流を対象に、現行プランの策定前に実施した際には、河内川で河床低下の緩和などの効果が確認されている。しかし、土砂の粒径が細かすぎると水棲生物への影響が懸念されることなどから、慎重に進めるとした。土砂の量・質や場所について関係者と調整し、試行につなげる方針だ。
改定素案ではこの他、23年度以降の第3段階についての対応方針も示している。第2段階で試行する置き砂の効果・影響を検証し、本格実施に移行する方針。さらに、三保ダムの流量制御や排砂施設、固定堰の改良について調査・検討を進め、有効性が認められた対応策の実施につなげるとしている。
提供:建通新聞社