福井県議会総務教育常任委員会が11日開かれ、総合政策部は「高速交通開通アクション・プログラム」に関連し、若狭湾エリアの新たな地域構想の方向性(案)を明らかにした。
嶺南の市町、商工会議所などの団体に加え、地域の若者や有識者から寄せられた意見を基にまとめたもの。今年度末を目途に地域構想を取りまとめ、アクション・プログラムに追加する方針だ。
示された施策の方向性は次の通り。
◆新たな玄関口の形成と地域交通ネットワークの強化(交通体系) 5年後の開業時に北陸の玄関口となる敦賀の拠点性を高め、関東・中京のみならず関西以遠からも人を呼び込み、交流人口拡大と併せて敦賀を中心とする二次交通を強化し、若狭湾エリア全体への開業効果の波及を図る
▽当面の終着駅となる敦賀を若狭湾エリア全域へのゲートウェイに
・全国から敦賀を訪れた人がスムーズにエリア内を周遊するよう、広域バス路線の整備やJR小浜線の利便性を向上
▽エリア周遊を伸ばす駅からの二次交通の強化
・来訪者が気軽に移動できるよう小浜線各駅からのシェアサイクルや、新幹線駅から海湖に向かうバス路線の整備、移動しながら景色・食事を楽しめる旅客列車や船を誘致
▽敦賀港の国際ターミナル機能等を強化
・鞠山南地区の岸壁延伸を敦賀開業までに完了し、ふ頭用地の拡張整備を促進
・大型クルーズ船と新幹線等を利用した「レール・アンド・クルーズ」による三大都市圏からの誘客を促進
▽高規格道路や県境道路の整備
・舞鶴若狭自動車道の交流量増大による4車線化の実現や県境道路の整備により、嶺南全域・近隣府県との交流を拡大
◆海湖と歴史の「ふるさと資産」を観光の核として磨きあげ(交流人口) 全線開業により、敦賀に加え小浜にも新幹線駅ができ多くの人が訪れることを見込み、今から嶺南市町が力を合わせ、交流人口を拡大させるため、リアス式海岸や三方五湖、北前船・鯖街道など、全国に誇る海湖と歴史を活かした観光の核をつくりあげるほか、さらに、若狭湾エリアを中心に県境を越えて観光・交流エリアを拡大する
▽海湖と緑をつなぐ「若狭の風景」創造
・景観に徹底的にこだわり、ビュースポットを守るルールの策定・実行、景観を害する看板除去や色彩統一等により、三方五湖や入り江の湾、里山など心に残る若狭の風景を形成
▽海湖を活かした自然体験・リゾートエリアの形成
・年縞等の自然学習、魚釣りやカヤックなどのアクティビティを楽しむ自然体験エリア、グランピングやマリンスポーツを楽しむリゾートエリアを形成し、水辺・湖畔に一流ホテルを誘致するほか、海、湖の自然や歴史などを語れるガイドを養成
▽歴史遺産や古くからのまち並みの復元・再生
・欧亜国際列車が走った鉄道や海外に開けた港の歴史遺産、鯖街道等の旧街道、戦国城址等を、ノスタルジーと日本らしさを再発見するまちのシンボルとして復元・再生
▽JR各駅の拠点機能の強化
・商店街のリノベーションと若者の新規出店支援や空き店舗対策等を実施するほか、土産物店等の誘致により、駅周辺を賑わいある交流の場として再生
▽日本遺産の北前船を活かした発信・交流
・北前船交易に使われた船荷問屋の建物や交易の様子を記す屏風など湊文化を発信するほか、かつての寄港地である都市と協力し、新観光ルートを形成
▽集積する漁家民宿の再生
・定置網体験や魚市場の競り参加など、民宿に泊まる仕掛けづくりや個性化により、数多く残る民宿を若狭の魅力として再生
▽県境を越えて観光・交流エリアを拡大
・鯖街道の往来や湖など共通テーマにより観光エリアを形成し、大きなエリアで人を呼込み
◆地域の特性を活かした若狭フード・コーストの形成(特徴発揮) 古来から御食国として都の食を支えた若狭の伝統的な食の加工技術と、ITで生育環境を制御する園芸施設など最新のテクノロジーの双方が融合する食産地を形成し、エリアの経済・雇用を支える産業に成長させる
▽御食国の伝統技術を活かした食品加工産業の集積
・へしこや梅干し等、伝統的な加工技術を活かした食品加工業を集積するほか、三方五湖のウナギ養殖・シジミ漁等を活性化
▽低廉な電気や降雪の少なさを活かして園芸の一大産地化
・高付加価値野菜の大規模園芸施設の集積と多品種が植生する薬草の栽培拡大により、園芸の一大産地を形成
▽先端技術を活用した漁業の高付加価値化
・データ解析による漁獲の効率化、高い生産性や多様な魚種への対応が可能な大規模陸上養殖などを実現
・大学・研究機関や漁業者等によるベンチャーを立ち上げるなど、水産業の高付加価値化、ブランド化を推進
▽食ブランドを磨きあげ「若狭といえば食」との評価を高める
・グジやカレイ、ウナギ、薬草など、若狭の自然が育んだ海・湖・山の幸のブランド化を促進、一流シェフの料理を楽しむレストランを誘致
◆まちづくりや産業のプレーヤーを育成・誘致(人材育成) 自らのまちを自らの手で元気にする人を増やすとともに、若狭湾エリアで新しい地域づくりやビジネスにチャレンジする人材を外から呼び込む
▽高度な農業・漁業を担う人材の育成
・スマート園芸や大規模養殖などITを使った将来の農業や漁業を支える技術者を育成・誘致
▽チャレンジ意欲の高い若者等の創業を支援
・新しいプロジェクトを実現する「チャレンジコミュニティ」や経営者育成塾の開催等により、地域で創業したい若者を応援
◆都市との交流を通したライフスタイル先進地の形成(長期的な定住戦略) 大都市圏との近接性を生かし、文化的・健康的な暮らしを楽しめ、子育てもしやすい居住エリアを形成し、移住・定住者を増やすほか、都市部からのUターンや地元に残った次世代の若者が関西に通勤したり、地元でクリエイティブに働き、活躍できる地域をつくる
▽自然と歴史が調和する洗練された移住・交流エリアの形成
・都市部を離れ、子育て環境がよく豊かな自然の嶺南地域に居住する人向けに、古民家リノベーションや体験農場整備により、憧れの生活エリアを形成
▽新幹線駅周辺のリ・デザイン(街の再設計)
・駅に近接した保育園、京阪神から通勤する専門医の診療が受けられる医療機関等を整備し、子育て、医療、教育環境をレベルアップ
◆自然環境の活用とエネルギー開発が共立する若狭湾エリア(長期的な拠点戦略) アジアや世界の人材育成・技術開発に貢献する原子力・エネルギー等の中核的研究開発拠点を形成し、国内外からの研究者や学生が集まる学術・研究エリアをつくる
▽エネルギー関連の人材育成・産業エリアの形成
・原子力工学系大学のサテライトや国際シンポジウムの誘致、新たに整備される試験研究炉の人材育成や産業振興への活用により、世界の研究機関・大学等との人的交流や福井発の技術普及を促進
▽世界的な価値をもつ水月湖年縞の研究成果を国内外に発信
・年縞から解明される過去の自然環境や人類の歴史など、最先端の研究成果を国内外に発信し、現地で学び体感できる拠点を形成
なお、実施時期は、交通ネットワークの強化や観光地の魅力向上など、敦賀開業の効果を若狭湾エリア全域に取り込むべきプロジェクトは主に敦賀開業までに、新幹線小浜駅を中心とした2次交通の拡充や駅周辺のまちづくりなど、全線開業に向けて目指すべきプロジェクトは中長期的にそれぞれ実施とした。