12月11日に開かれた東京都議会財政委員会では、都の入札契約制度改革に関して質疑が行われ、JV結成義務撤廃や1者入札中止の取り扱いに関して、中小企業の技術力向上・技術者育成の視点からの試行結果の十分な検証や、契約手続きの遅れによる工期遅延や施工者へのしわ寄せがないよう求める意見や要請が相次いだ。
尾島紘平氏(都民ファーストの会)は、入札参加者数の増加や高落札率案件の低下など入契制度改革の効果を評価する一方、契約手続きが遅れている豊洲市場の追加対策工事については「緊急を要する特殊な案件。その他多くの工事と“同じテーブル”で議論するのはおかしい。柔軟に対応すべき」と例外的な対応を求めた。
五十嵐律契約調整担当部長は「緊急性や特殊性が高く通常の手続きで契約締結が困難な案件で、やむを得ず例外的な契約を行う場合、法令などと整合させつつ必要な手順を踏むとともに、判断基準や意思決定過程を明らかにする必要がある」との見解を示した。
薄井浩一氏(公明党)は、参加希望者が1者以下で入札を中止した案件について、入札参加者を増やすために仕様変更などを行って品質が低下するようなことがないか確認した。
五十嵐部長は「工事の仕様については変更していない。地理的要件や施工実績などの要件の緩和、単価の見直しにより入札参加を促している」と答え、契約手続きの遅れが品質に影響を及ぼすことはないとした。
曽根肇氏(共産党)は、JV結成義務の撤廃に関連し、「中小企業が必要以上に振り落とされないような工夫が必要」と指摘し、丁寧な検証を求めた。
五十嵐部長は「混合入札では従来に比べて入札参加要件を広げ、中小企業単体での入札参加を可能にしている。今後、試行の検証の中で効果を確認するとともに、客観的なデータを基にさまざまな角度から良い面、悪い面を確認していく」と答えた。
伊藤祥広氏(都議会自民党)は、JV結成義務の撤廃によって単体での受注が増えていることに触れ、「中小企業の技術力や受注機会に悪影響を及ぼし、将来の担い手確保に支障を来すのではないか」と疑問を述べた。
五十嵐部長は「JVによる落札が減少する一方、一定の能力要件を満たす中小企業が単体で大型案件の入札に参加できるように改正したことで、中小企業が単体で落札するケースも出てきている。中小企業の受注額の割合は前年度と同水準となっている」と述べた。その上で、「地域経済を下支えし、災害発生時などに大きな役割を担う中小企業の育成や受注機会の確保は重要な視点だ。今後行う試行結果の検証作業は、そうした視点も加えて行っていく」との考えを示した。
伊藤氏はさらに「建設業団体からは過度な価格競争への誘導、中小企業の受注機会の減少などを危惧する声が寄せられている」と指摘し、1年間の試行期間の終了を待たずに速やかに見直しに着手すべきだと訴えた。
五十嵐部長は「試行の状況については、入札監視委員会での検証を始めており、2018年3月に検証結果を取りまとめる。今後、入札に関するデータを積み上げながら検証を進めるとともに、18年1月には入札監視委員会で現場の声を聞くため団体ヒアリングを行う」と答え、理解を求めた。
提供:建通新聞社