住宅部門で最優秀に輝く安島の新屋(あらや)は、設計担当のヒャッカ代表、丸山晴之氏がプレゼンした。計画地は三方を海に囲まれた住宅団地で、どこにでもある郊外の新興住宅と同じ様相を呈する。施主は旧集落の建築が持つ伝統的な要素を求めた。景観をつくる外部構成はこの地の潮風に対抗し、地域の伝統的建築に倣って屋根は瓦、外壁はサワラ板。庭と近い内部空間は自然の風を感じながら生活したいと要望され、小さな部屋の集積とその連続性を確保。4つの木箱(機能が固定化された部屋)を半外部的空間(廊下や土間的空間といった余白)でつなぎ、庭との連携や四方の通風を確保し、古民家がもつ部屋の拡張性に配慮した。
次点の、えどめしもいえは伊藤瑞貴建築設計事務所代表が紹介。敷地南側の前面道路は一見交通量が少ないようだが特に週末は交通量が多く、西側と北側は住宅が隣接し安易にまちに開くことができない。そこで中庭型の配置計画とし、しかし町に背を向けた閉ざされた佇まいでは不適切と考え、まちと程よい距離感を保ち、調和した住宅を目指した。パッシブハウスとしても機能するよう陽射しや風の流れを検討し建物プラン。内部は周辺環境から紡ぎ出された中庭に隣接するよう吹き抜けのあるLDK空間を配慮しその空間に隣接するよう様々な居場所や個室を配置した。
最終審査3位の板倉邸はアトリエ721の山博充氏が説明。施主は池田町に生まれ育ち本人所有の山の木を使った建築をと提案。広すぎず狭すぎず、3人の息子たち家族が集まれる家で今風のペラペラな軽い感じではなく、どしっとした落ち着いた住まいを希望。杉材は柱や梁の構造材はもとより造作材や天井材、建具材にも幅広く使用。仕上げも浮造りや焼いたりも。施主や大工さん、左官屋さんたちと一緒に造っていく過程は物づくりの喜びを感じるかけがえのない時間だった。