川崎市は、市内に不足している優良な宿泊施設や保育施設の整備、拠点地区などでの必要な都市機能の導入・更新を促進するため、建物の容積率を緩和する制度の運用を見直す方針だ。「総合設計制度の許可基準」では、新たに宿泊施設の整備について容積率緩和の指針を設け、保育施設の園庭を空地評価の対象とする。また、「低炭素都市づくり・都市の成長への誘導ガイドライン」でも、保育園の園庭を公開空地の評価対象とし、指針の基準を満たす宿泊施設を評価。機能更新型高度利用地区ついては運用基準を明確化する。12月25日までパブリックコメントを実施し、建築審査会などを経て2018年3月末までに基準類を改定・策定する。
川崎市では、「新・かわさき観光振興プラン」で宿泊数、外国人比率、修学旅行者を増加させることを目標に掲げており、優良な宿泊施設の整備が求められている。一方、待機児童の解消に向けては、必要な場所に必要な量の認可保育所などを効率的に進めることにしており、さらに市内の拠点地区については必要な都市機能の集積・更新を推進することを基本施策としている。こうした政策課題に対して今回は、容積率緩和の観点から取り組む考え方をまとめた。基本的に基準などの運用を見直すが容積緩和率の上限は変更しない。
まず、優良な宿泊施設の整備を誘導するために「宿泊施設容積緩和制度運用指針」を策定。評価対象とする宿泊施設の水準を示し、「総合設計制度の許可基準」で新たに宿泊施設を緩和対象とする他、「低炭素都市づくり・都市の成長への誘導ガイドライン」では評価対象の基準化を図る。
対象とする宿泊施設は、@客室総数50室以上で、客室面積は原則、最低面積15平方b以上かつ2割以上が22平方b以上A国際観光ホテル整備法施行規則の基準を満たす施設(外国語による案内標識の設置、高齢者・身体障害者などが客室の利用を容易にする設備の整備など)B旅館業法に規程する「ホテル営業」「旅館営業」のための施設―とする。これらの宿泊施設については、床面積の合計に相当する容積率を、前面道路の幅員が8b以上の場合は50%、12b以上の場合は100%を限度に割増す。
次に、保育施設の整備を誘導するためには、一定の評価基準を満たす保育施設の園庭を、容積率を割増す基礎となる公開空地として新たに評価する。対象となるのは、認可保育所、幼保連携型認定こども園、小規模保育事業所など。園庭を公開空地に準ずる空地(地上面の場合は係数1・5、屋上の場合は係数0・8)として扱う。上限については従来の運用から変更しない。
機能更新型高度利用地区については、「高度利用地区指定指針」に準拠しベースとなる割増容積率を定める。具体的には、誘導用途が3分の2以上で200%を、さらに幅員5・5b以上の歩道(歩道状空地を含む)に面して主たる出入り口を設ける場合などで50%を割増す。対象となる区域は▽現に都市機能の集積度が高い都市の中心的な役割を果たしている区域▽複数の鉄道路線などが結接しているなど公共交通による利便性を備えた立地条件である区域▽4車線道路や駅前広場などの高水準な基盤施設などが備わった十分な歩行者ネットワークで接続する区域―としている。
提供:建通新聞社