吉野川水系の河川整備に関して学識経験者の意見を求める「吉野川学識者会議」(議長・中野晋徳島大学環境防災研究センター教授)の2017年度第3回会合が16日、徳島市内で開かれ、吉野川直轄河川改修事業(吉野川、旧吉野川)と吉野川総合水系環境整備事業(吉野川、早明浦ダム)についてそれぞれ事業再評価を行い、いずれも事業継続などを求める四国地方整備局の今後の対応方針案を了承した。このうち吉野川直轄河川改修事業は、河川整備計画の変更手続きに伴う再評価で、事業期間を09年度から38年度とし、吉野川上流(池田〜岩津)において当面は24年度をめどに勝命箇所の完成、加茂第二箇所の概成を図る他、おおむね10年程度で全ての無堤箇所での整備着手を目指す内容などが盛り込まれている。審議内容は同局事業評価監視委員会などに報告。最終的に本省に上げられる。
吉野川直轄河川改修事業では、吉野川上流でこの他に現在事業中の沼田箇所や中鳥地区河川防災ステーションで事業を推進する。無堤箇所については、池田・箸蔵・井川・昼間・宮岡・加茂第一・半田・脇町第三箇所などで整備着手が見込まれている。また、吉野川下流(岩津〜河口)においては、事業中の西林箇所(浸透対策)、勝命箇所(堤防整備)、川島箇所(浸透対策)、榎瀬川(水門)の整備推進の他、西原・川島・上板・徳島第二・藍住・応神箇所の侵食対策、善入寺地区の河道掘削等(樹木伐採)の事業着手などを予定している。総事業費は848億円。
この他、旧吉野川(旧吉野川、今切川)で堤防の整備や河道の掘削、浸透対策や地震津波対策などを推進する。総事業費は987億円。24年度を目途とした当面の対策については、現在築堤中の喜来箇所(新喜来上流地区)の築堤と勝瑞箇所(勝瑞地区)の堤防嵩上げの完了の他、洪水対策と地震・津波対策が重複する大津箇所(中喜来下流地区)と松茂箇所(広島地区)の築堤などの完了を掲げている。
事業再評価では、前回12年度の再評価時から基準年の変更(12年→17年)や便益の発現方法、資産額の時点更新に伴う便益の増大により、総費用(C)や総便益(B)が増大(総費用1383億円→1531億円、総便益2563億円→2975億円)したが、全体事業としての費用便益比(B/C)は前回と同じ1・9とした。なお、残事業については総費用858億円、総便益2722億円で、費用便益比は3・2とした。また、24年度を目標とする当面の対策については、総費用361億円、総便益1356億円とし、費用便益比は3・8となっている。
一方、吉野川総合水系環境整備事業では、完了箇所の「芝生地区かわまちづくり」(三好市)、再評価として「三庄地区かわまちづくり」(東みよし町)と「早明浦ダム水辺整備」(早明浦ダム周辺)、「早明浦ダム水環境整備」(同)を事業評価。これらは事業完了や一定期間(3年)が経過したことに伴い実施した。
審議では、整備局が▽芝生地区が15年度工事完了▽三庄地区が芝生広場を整備済み▽早明浦ダム水辺整備は周辺環境整備が全9地区のうち8地区で完了、坂路工が全5カ所のうち4カ所で完了▽早明浦ダム水環境整備は植栽工・渓流工が完了し、モニタリングを実施中−など事業の進捗状況(総事業費101・6億円のうち整備済みは93・9億円)を説明。
また、今後の事業見込みや費用便益比(全体事業B/C=3・8、残事業B/C=2・3)などから、完了箇所については「今後の事後評価の必要性や改善措置の必要性はない」とする整備局の方針を了承した他、再評価については事業の継続を求める整備局の方針を了承した。
提供:建通新聞社