名古屋市は、愛知県体育館の移転後に、名古屋城二之丸御殿を復元整備することなどを盛り込んだ「特別史跡名古屋城跡保存活用計画」の案をまとめた。近くパブリックコメントを行い、2017年度内の策定を目指す。
同計画は、天守閣や本丸御殿だけでなく、名古屋城跡全体を対象に、保存・整備と活用の方向性を示すもの。整備に関わる方針には、「遺構等の保存に影響を及ぼさないこと」を前提としながら、保存・活用のための整備を計画的に行うことを掲げた。
今後に整備が大きく進展しそうなのが、本丸の南東側に位置する二之丸地区だ。現在、二之丸地区の中央には愛知県体育館が立地しているが、この6月に愛知県・名古屋市の間で、名城公園への移転案が急浮上。同計画では、今後の移転を見据えた二之丸地区全体の整備を重点的な取り組みに位置付けた。
体育館があるのは二之丸地区の南側で、現在は入場無料の区域。移転後は、「二之丸御殿・向屋敷」や「大手門・東門」、「櫓(やぐら)」の復元整備を実施する。
整備事業は3段階での進行を考えており、各段階におおむね10年間を見込む。南区域は第1期で県による体育館の移転を推進。第2期には各遺構の復元に向けた調査・研究を進めるとともに、特別史跡としての告示を目指す。整備は第3期に進めるとしている。
一方、二之丸庭園を中心とした北側のエリアは本丸などと同様、有料区域となっている。第1期の間は、既に実施中の二之丸庭園の保存整備を継続。第2期以降、名勝指定範囲の拡大を検討していく。現在、名勝として指定されている範囲は面積5137平方b程度だが、将来的には周辺の約3万平方bにまで拡大したい考えだ。
北側エリアではこの他、庭園に面して整備されていた茶屋建築の「余芳」の復元整備も盛り込んだ。第1期に調査研究、第2期の整備を進めるスケジュールを描いている。
市は両区域を一体的に整備することで、往時の名古屋城の全体像の再生を目指す。
重点取り組みとしてはこれに加え、本丸地区でも同様に、往時の名古屋城を入城者に実感させるような場の整備に取り組む。天守閣・本丸御殿以外の整備事業としては、東北隅櫓の復元整備を第1期に調査・研究し、第2期に整備。本丸多門櫓の復元整備については、第2期に調査研究、第3期に整備を進めるとした。
また、全体で延長約8・2`に及ぶ石垣についても、適切な保全と安全確保に向けた修復整備を3期にわたって進める。現況調査を踏また石垣カルテについては第1期で作成し、その後の整備の基礎データとする。
提供:建通新聞社