名古屋市教育委員会は、11学級以下の小学校(小規模校)の解消に向けて、学校規模適正化推進計画(仮称)の策定作業に着手した。このため、学識者や学校関係者で構成する学校規模適正化推進懇談会を設立、12日に初回の会合を開催。小規模校だけでなく、生徒数が過剰に多い過大規模校や、今後に増加が見込まれる老朽校舎の増加といった課題も含めて、一体的に対策を検討していく。整備手法の見直しや、施設運営の効率化といった新たな施策の導入が鍵になりそうだ。計画は2018年度末の策定・公表を予定している。
計画の対象期間は10年以上を想定。計画期間終了までの学校規模適正化を目指すとしている。ただ、市の小学校261校のうち、小規模校は17年度時点で74校を占める。10年に策定した「小規模校対策に関する基本方針・実施計画」では、優先的に対策する9校を絞り込んだものの、解消できたのはなごや小に統合された3校のみ。今後も少子高齢化とともに小規模校が増大する見通しで、対策は急務だ。一方で守山区など、児童数の増えている一部の地域では過大規模校も発生。学校の老朽化も進んでおり、課題が複雑化している。
これに対し、市は12日の懇談会で新たに検討する施策として▽整備手法・基準の見直し▽保有資産の有効活用▽施設運営の効率化▽施設の多目的活用▽良好な教育環境の確保―を提示。学校施設という資産を有効活用する観点から、小規模校も過大規模校も一体的に対応する取り組みを打ち出した。
新たな5施策のうち、特にハード整備に関わる施策では、「整備手法・基準の見直し」がある。将来の人口減少や人口構造の変化を見据え、柔軟な設計・整備手法を導入するとした。例えば、生徒数の急増に伴って分離新設校の建設を計画中の志段味東小では、将来的な生徒数の減を見越して教室数の増減が可能な設計を公募。柔軟に施設構成を見直す余地を残すため、新設校としては初めて鉄骨造を採用した。
また、民間企業の資金やノウハウも積極的に有効活用する。北区で計画している楠小の改築では、初めてPFI手法の導入を検討している。
「保有資産の有効活用」では、利用のない余裕教室を、地域コミュニティーの活動の場や防災拠点として転用。また、未利用地や既存の公共施設も学校に活用できないか検討する。
「施設運営の効率化」では、プールなどの施設について、民間施設と提携したり、複数校で共同利用したりすることなどが考えられる。
「施設の多目的活用」では、学校の統合に合わせて施設を多目的化したり、他施設と複合化。統合後も、コミュニティーや防災などこれまで学校が担ってきた機能を維持できるようにする。
「良好な教育環境の確保」では、施設一体型の小中一貫校の設置などを模索する。
懇談会での諮問やパブリックコメントを経て、19年3月にも計画を策定・公表する。
提供:建通新聞社