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日本工業経済新聞社(山梨)
2017/10/12

【山梨】不法産廃代執行/現地で安定化対策を

 県議会土木森林環境委員会は、県の9月補正予算に計上された不法投棄防止対策費の審査内容を本会議で報告した。北杜市須玉町に不法投棄されている産業廃棄物について、委員会では「県が決定した行政代執行の工法は全量撤去ではない」と質問。県では、現場で廃棄物の崩落防止などの対策を講じることで地域の安全確保が可能となるため、現場で必要な対策を講じると説明した。
 県は9月補正予算に、行政代執行を行う場合の対策工事の実施設計費や検討会議の開催費として4887万3000円を計上し、議会に承認された。
 委員会では、委員が「県が原因者に対して全量撤去を命じたが、県が決定した行政代執行の工法は全量撤去ではない。行政代執行は、原因者が命令に従わない場合、県が代わって原因者に命じた内容を実施するのではないのか」とただした。
 県では、廃棄物処理法では命令に従わない場合、知事は生活環境保全上の支障の除去等の措置の全部または一部を講じることができるとされ、必ずしも原因者に命じた内容をそのまま原因者に代わって実施するものではないと説明。行政代執行をどのように実施するかは、事業の状況を総合的に勘案し判断するとされていると答弁した。
 また、委員が、地域住民には行政代執行により全量撤去することに期待する声があるが、県が決定した対策工事は現場で措置を講じることになったのはなぜかと質問。
 県では、廃棄物の内部で高濃度の硫化水素が発生し、生活環境保全上の支障が生じるおそれがあることから、行政代執行を前提に、硫化水素対策の専門家などで構成する検討会議を設置。硫化水素の発生状況などを踏まえ、地域の安全を確保する上で必要な対策について検討を進めた。
 その結果、検討会議から、高濃度の硫化水素ガスが廃棄物内部の深いところに留まっていることから、現場において廃棄物の崩落防止などの対策を講じることにより地域の安全確保を図ることが可能となるとの意見が出され、現場で必要な対策を講じることにしたと説明した。
 産廃は、須玉町の塩川沿いの2カ所に野積み放置されている。内部で4000ppmを超える高濃度の硫化水素が発生したことから、県では昨年3月に全量撤去するよう廃棄物処理法に基づく措置命令を発出している。
 しかし撤去が進まず、県では行政代執行を前提に対策工法などを検討する会議を設置。検討会議では、最適な工法として粘土とセメントを混ぜて固化させる「セメント安定化」(工事費は約5・8億円、工期14カ月程度)を提示している。
 なお、対策工法の基本設計はパシフィックコンサルタンツ山梨事務所(甲府市)が担当。