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建通新聞社(東京)
2017/10/02

【東京】都 入契制度改革「試行内容をしっかり検証」

 9月29日に開かれた東京都議会財政委員会では、薄井浩一氏(公明党)と伊藤祥広氏(都議会自民党)、井樋匡利氏(共産党)が入札契約制度改革の在り方について質疑を行い、財務局が6月下旬に開始した試行の十分な検証と適切な見直しを求めた。これに対し武市敬財務局長は「試行について厳しい意見も含めさまざまな声を聞いている」と述べた上で、「まずは試行を積み重ねてしっかりと検証し、改めて建設業界の皆さんから意見を聞いた上で、より良い制度となるように取り組んでいく」との意向を示した。課題などを洗い出し、都政改革本部での議論や業界意見の反映などを行って、見直しの必要性やその内容を検討していく考えだ。
 薄井氏は「低入札によって品質の低下、下請け業者へのしわ寄せ、労働者の賃金カットなどがあってはならない」と指摘し、低入札価格調査制度の適用拡大に伴う調査厳格化について聞いた。
 五十嵐律契約調整担当部長は「工事成績評定で65点未満の案件があった場合に失格とする工事成績判断基準を導入するとともに、積算内訳書が従来の特別重点調査基準に該当する場合に失格とする数値的失格基準を導入した。社会保険未加入者と下請け契約を結んでいないかを確認する履行状況調査も実施する」と説明した。
 薄井氏は低入札価格調査制度を適切に運用するよう要請。さらに、JV結成義務の撤廃など制度改革の見直しを求める声が寄せられていると述べ、「業界の意見に耳を傾けながら適宜見直しを行い、公共事業の担い手確保につながる取り組み」を強く求めた。
 伊藤氏は、今回の議会に提出された請負契約案件の3割に当たる5件が1者入札だったことへの認識を聞いた。
 五十嵐部長は1者入札が発生する理由について「同時期に同種の工事が発注される。手持ち工事が多く技術者が確保できない。施工に当たって特殊な技術者や機械が必要。現場の制約が多い」などと説明。また、電子調達システムを通じた入札では、参加者は開札まで他の参加者の情報が分からないため、「結果として1者入札だったとしても、潜在的に競争はなされていると考えられる」との判断も示した。
 伊藤氏は、潜在的に競争が行われているのであれば、必ずしも1者入札を否定すべきではないと指摘し、迅速な事業執行に影響が及ばないよう注文を付けた。
 伊藤氏は次に、落札率が99%以上だった3件への認識を聞いた。
 五十嵐部長は「手持ち工事の有無▽人員確保の可否▽施工の困難性▽採算性―などを総合的に判断し、99%以上の落札率となったのではないか」との見方を示した。制度改革前の手続きに沿って適正に入札が行われたことから、99%の落札は「何ら問題はない」と答弁した。
 伊藤氏はまた、JV結成義務の撤廃が、都の目的とは逆に中小企業の入札参加機会の減少につながらないか疑問を述べた。
 五十嵐部長は「都の工事ではJV参加者数が減っており、中小企業の入札参加の制約になっていることも考えられる」と結成義務撤廃の背景を説明。一方で「今後実施する検証作業の中で、撤廃の影響をしっかりと確認していく」とも述べた。
 井樋氏は入契制度改革について一定の評価をした上で、課題は残されていると指摘。競争性、透明性を確保しながら中小企業が育つような配慮が必要だと述べ、こうした点に配慮したさらなる制度改革への取り組みを求めた。

提供:建通新聞社