東京都の「特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化促進に向けた検討委員会」(委員長・加藤孝明東京大学准教授)は、9月27日に開いた4回目の会合で、賃貸建築物の耐震化促進に向けた方策を協議し、占有者に気兼ねして耐震化の協力を求められない所有者や、移転費用がネックとなって合意が得られない所有者への支援策を具体化していくことなどを確認した。今後、11月と2018年1月ごろに委員会を開き、分譲・賃貸マンションや賃貸事務所・店舗など建物用途の分類ごとに対応策を取りまとめていく。
今回の検討委員会では、まず、都が建物所有者に行っているヒアリング調査の最新(6月末現在)の状況を説明。耐震診断の結果、耐震性不足と判定されたものの耐震化に着手していない約2200件のうち、半数に当たる1073件の建物所有者に耐震化の状況や課題を確認したところ、「補強設計を実施している」のは45件だけで、残る1028件は「実施していない(不明20件含む)」状況だった。耐震改修については「予定している」が226件、「建て替え・除却を予定」が189件あった一方、「実施しない」との回答が568件に上っている。
耐震改修や建て替えを実施する際の課題としては、費用負担が大きいことや、改修によって建物機能が失われること、賃借人などとの合意形成が難しいことなどが大半を占めている。
今回の委員会では、こうした状況を踏まえながら、主に賃貸建築物と個人住宅の耐震化を促すための課題や、都が取り組むべき方策について意見を交換。占有者に気兼ねして耐震化の協力を求められない所有者への対応として、賃貸人と賃借人の交渉に行政が関わることが難しいため、賃借人も耐震化が必要と判断できるような方策を考えていくことを確認した。
占有者に協力を求めたものの移転費用がネックとなって合意が得られていない所有者への対応に関しては、新たな助成制度などが必要だと判断し、具体的な内容についての検討を進めていく考えだ。
提供:建通新聞社