9月26日に開かれた東京都議会本会議で、秋田一郎氏(都議会自民党)が入札契約制度改革について代表質問し、財務局案件で始まった試行に依然として多くの中小建設業者が不安や疑問を抱えていると指摘した上で、小池百合子知事に見直しを行う考えがないか聞いた。これに対し、小池知事は「国や他の団体が既に導入している制度などを参考にしながら制度を構築した」と試行内容が“特殊”なものではないと述べる一方、制度改革の検証を進めていく中で「引き続き業界団体の皆さんから意見を聞く」との考えも示した。
秋田氏は、JV結成義務の廃止による中小建設業の実質的な受注機会の減少や、低入札価格調査での過去の工事成績を対象とした失格措置などに建設業の多くが不安や疑問を抱いていると指摘。さらに、1者入札の中止についても、8月に開いた臨時都議会で予算化した豊洲市場の追加対策工事9件のうち4件が中止となったことを例に「公共事業の円滑な執行に影響を及ぼす」と懸念を示した。
小池知事は、「今回の改革が目指しているものは、健全な競争の下、より多くの方が入札に参加しやすい環境をつくり、入札の透明性を高めるとともに、中小企業が活躍できる環境を維持していくことだ」と改めて説明。こうした観点を踏まえつつ「都の入札に関わる課題解決に向け、国や他の団体が既に導入している制度などを参考にしながら制度を構築した」と述べ、特殊な制度設計ではないとの考えを示した。
一方、「中小企業の団体からの意見も参考にして、低入札価格調査制度の適用範囲を当初案から縮小するなど、中小企業に配慮した見直しを加えた上で試行を開始した」と話すとともに、今後の制度改革の検証に当たって「引き続き業界団体の皆さんから意見を聞きながら、全体として都民の便益向上につながるよう(改革を)しっかりと進めていきたい」と述べ、見直しに含みを持たせた。
秋田氏はまた、入札契約制度改革をきっかけとした価格競争の激化が、中小建設業の経営や人材の確保・育成に悪影響を及ぼすことにも懸念を示した。
小池知事は、「高品質な社会インフラの整備は、工事の受注者である事業者の力に支えられている。将来にわたって公共工事の品質を確保するためには、発注者である都が、適切な競争入札の下で、優良な事業者が適正な価格で受注できる環境を整備していく必要がある」との見解を示した。その上で、「適正な競争を確保しつつダンピングを防止するために、低入札価格調査制度などの適切な運用に努める一方、女性活躍や若手育成、週休2日制のモデル工事の試行といった措置を講じるなど、人材の確保・育成に向けた環境整備を進めている」と答えた。
提供:建通新聞社