日本工業経済新聞社(茨城)
2017/09/09
【茨城】あすなろの郷改築で移行促進センターを先行へ
老朽化の進む県立あすなろの郷(水戸市杉崎町1460)について、建て替えを前提に今後のあり方を検討する委員会(委員長=小澤温筑波大学大学院教授)の第6回会合がこのほど開かれ、報告書案がおおむね了解された。報告書案によると、新設する施設は、地域移行促進センター(仮称)や高齢化棟、あすなろの郷病院で、このうち地域移行促進センター(仮称)を先行して整備する。続いて高齢化棟を整備し、現在の新棟をセーフティネット棟として活用する。
報告書案では、あすなろの郷の現状と課題、地域移行等に関する基本的な考え方、コンセプトに基づく民間施設などとの連携システムなどを示した上で、各施設の機能や想定定員、土地活用方策などを盛り込んだ。
新設する建物は地域移行促進センター(仮称)、高齢化棟(高齢障害者居住サービス)、あすなろの郷病院(医療)の3施設を予定。
このうち地域移行促進センター(仮称)は、地域生活の訓練の場として分散型体験施設やコーディネート機能などを持つ施設とする。健康管理や夜間支援が行き届いた環境で生活訓練を行い、グループホームなどへの地域移行を進める。
施設はユニット型建屋とし、完全個室を確保。各ユニットに風呂・トイレ・共有スペースを設置する。ユニット間は連結し、連携した支援を可能とする。
高齢化棟(高齢障害者居住サービス)は加齢により身体機能や認知機能の低下した高齢障害者のための施設とする。あすなろの郷病院を併設し、介護的なケアを行うとともに、必要に応じて医療バックアップをしながら、ゆったりとおだやかに生活できる「終の棲家」を提供する。
各建屋は定員50人以内の独立形とし、居室、デイルーム、食堂、職員室、中庭などを配する。建屋間は連携し、あすなろの郷病院に直結する動線を確保する。
施設は高齢障害者の利用状況を勘案しながら段階的に整備する方針で、時期については前倒しも検討する。
セーフティネット棟は強度行動障害者や民間施設で処遇困難となった障害者に対し、感情の変化や不適切行動を軽減するなど専門性の高い支援を行う施設とする。医療的なケアも行いながら生活行動などが落ち着くよう支援し、一定期間後はアセスメントを行いながら、グループホームなどへの移行を目指す「地域移行促進センター(仮称)」へのチャレンジを図る。
施設は既存の新棟を活用。将来的には施設配置の新基準に沿うよう施設の改修を検討していく。
現在の定員は新棟150人、旧棟312人の計462人。2021〜22年ごろをめどに先行して地域移行促進センター(仮称)を整備する。
10年後の26〜27年ごろまでには高齢化棟を整備。また、セーフティネット棟からチャレンジを図り、延べ90〜110人の地域移行を見込む。施設定員は促進センターが80〜100人、高齢化棟が80〜100人、セーフティ棟が140〜200人の計340〜360人。また、この時期に旧棟を廃止する。
20年後の36〜37年ごろには地域移行などを引き続き推進し、施設定員は240〜300人としたい考え。
新施設は2003年築の新棟との連携を考え、新施設は既存新棟の周辺地域となる見込み。また、あすなろの郷の敷地は埋蔵文化財包蔵地(杉崎権現古墳・コロニー古墳群・大平古墳群)であり、新たな土地開発には制約があるが、土地活用の参考例として、障害者スポーツ支援拠点、農園・農産物加工所など農福連携の拠点、地域交流、自然体験・観察の森、歴史公園などが挙げられている。
なお、本年6月には県が建て替えに伴う基本構想を叶迹纉cコンサルタント(東京都千代田区)に委託。年度内にまとめる予定だ。
県立あすなろの郷は、知的障害者および重症心身障害児者のための支援施設。1973年12月にコロニーあすなろとして開設。2003年4月に内原厚生園と統合し、あすなろの郷に改称した。66万5452uの敷地に利用者の状況に応じた各寮や病院、管理棟などが配されている。03年の再編統合時に地域生活支援センターと新設居住棟を開設した。全体の建物面積は2万9745u。運営主体は指定管理者の社会福祉法人県社会福祉事業団。