地方独立行政法人さんむ医療センター(山武市成東167)は、同医療センター建替整備基本構想を取りまとめた。現在の病床数247床(許可病床数312床)を大幅に削減することなく、地域包括ケア病床へ転換することで効率的な運営を行い、230床程度を維持。新病院整備に伴う概算事業費を98億6000万円とした。これを踏まえて今後、本年度で基本計画の策定に着手。山武市や関係機関とも協議しながら、2023年度以降の新病院開院を目指す。
基本構想作成にあたっては昨年度、東日本税理士法人(東京都新宿区矢来町75)へ支援業務を委託した。
新病院の方向性として示されたのは、@地域特性に配慮した医療の提供(少子高齢化が進む山武市において、公的病院として地域住民に必要な医療を提供)A地域包括型医療・地域医療連携B医療・保健・介護の三位一体経営C医療水準の向上D患者サービスの一層の向上E安心で信頼できる優れた医療の提供(産科医療及び緩和ケア、回復期リハビリテーション、地域包括ケアの充実等)F地域で活躍できる優秀な総合診療医を育成し、地域医療のさらなる充実を目指すG市との医療施策推進における役割(災害時における事業継続計画及び災害対応マニュアルに基づく医療協力)H健全経営の推進。
急性期医療を担っていくためには、現行の職員体制での運用を考えた場合、現在の病床数247床(許可病床数312床)を大幅に削減することなく、地域包括ケア病床へ転換することで効率的な運営を行い、230床程度(一般病床120床、地域包括ケア病床50床、回復期リハビリテーション病床40床、緩和ケア病床20床)を維持。
診療科目についても、総合病院として多角的医療を提供できる現在の診療科構成(内科、循環器内科、呼吸器内科、消化器内科、緩和ケア内科、外科、小児科、産婦人科、整形外科、脳神経外科、耳鼻咽喉科、眼科、泌尿器科、皮膚科、小児外科、麻酔科、歯科口腔外科、リハビリテーション科)を維持する。
また、新病院の役割・機能としては、@二次救急医療機能(救急患者に対し24時間対応可能な医療体制の整備)A急性期医療機能(4疾病を中心にした急性期患者中心の入院を優先した体制整備)B周産期医療・小児医療の地域中核機能(24時間対応可能な体制整備)C地域医療支援病院の認定Dセンター制の導入(糖尿病など複数の診療科の診療を必要とする傷病に対応するためセンター制を導入し、チーム医療による総合医療を提供)E7対1看護体制の堅持F事務補助者等の積極的な導入G病院機能評価認定の取得H臨床研修指定病院への体制整備などを挙げている。
病院建設については今後、現有施設を活用した整備と移転新築を比較検討し、市民にとって利用しやすい病院建設、限りある予算の中で機能的で使いやすい病院建設を目指す。その際、設計・施工分離発注方式(従来方式)、設計・施工一括方式(DB方式)、施工予定技術者協議方式(ECI方式)などの整備手法について、工期短縮やコスト削減の観点から検討を加えるとしている。
病床数(230床)から算出した概算事業費は98億6000万円。内訳は土地購入費2億円(敷地面積約2万u)、解体工事費6億円、建設工事費(病院本体)63億9400万円、造成費・外構工事費・工事雑費5億3800万円、設計・監理・調査・測量費5億2800万円、医療機器・什器備品・情報システム整備費15億円、開院準備経費1億円。
土地購入費に関しては、現在の敷地の85%が借地で買い上げが必要になるため、現在地での建て替え、移転新築とも、それほど変わらないとしている。
いずれにしても、現時点での概算であるため、20年の東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う資材価格や人件費への影響等も含め、今後、計画を固めていく中で精度を高める必要があるとしている。
同病院は現在、敷地約2万4627uに北棟(5階建て、延べ7678・37u)、中棟(3階建て、延べ2784・96u)、南棟(6階建て、延べ5930・38u)、カルテ棟(3階建て、延べ237・42u)、MRI棟(平屋建て、延べ121・38u)、中央物流センター棟(2階建て、延べ85・70u)等がある。
北棟は新耐震基準によるものだが、最も古い中棟は11年に戸田建設の設計・施工で耐震改修を行っている。また、南棟は耐震診断で一部耐震性が不足していることが指摘されている。