津市は、市発注の公共事業に従事する労働者の賃金など労働環境を確保するため「(仮称)津市公契約条例」の制定を検討している。8月10日に開かれた市議会全員協議会で、「条例制定の考え方」を説明したもので、労働環境の確保に向けて、発注者と受注者の責務をそれぞれ定めた。その中で市側として「労働報酬下限額の制度の検討」を挙げ、一定の検討期間を設けた上で「賃金条項」を定めるものとした。10月に素案を作成し、広く意見を聞いた上で、11月開催の第4回市議会定例会に提出する方針だ。24日に開かれた「第2回津市入札等監視委員会」でも説明し意見を求めた。
市が示した「条例制定の考え方」では、同市における近年の入札の傾向などから、土木工事などの建設工事について、「事業者間の競争が厳しい状況で、労働者の賃金水準や労働環境が不透明になりがちで、労働者への賃金や労働環境への影響が懸念される」とし、業務委託についても、「清掃等の一部の業務委託に限っては、落札価格の下落傾向が見受けられ、人的経費への影響も危惧される」とした。このため、市として、入札の競争激化による労働環境の悪化に対する迅速な対応と未然防止を図るとともに、よりよい労働環境の確保などのため、公契約条例を制定することを決め、理念を掲げるだけではなく、実効性を確保したものにするとした。このため関係する事業者団体から意見などを聞き取り状況把握に努めた。
内容を見ると、基本方針として、▽労働者の適正な労働環境の確保▽品質および適正な履行の確保▽公正性、透明性および競争性の確保▽談合その他の不正行為の排除▽地域経済の振興および地域社会の発展の推進―の5項目を掲げた。
発注者と受注者の責務のうち、発注者(津市)側として、「労働報酬下限額の制度の検討」、「労働環境の確保」、「不良不適格業者の排除」、「契約内容を踏まえた発注・契約方法の活用」、「価格、品質、履行期間等の契約条件の適切な設定」、「予算の適正かつ効率的な執行」を挙げ、事業者(受注者)側として、「関係法令等の順守」、「雇用環境の確保」、「下請け等と対等な立場における契約」、「適正な積算根拠に基づく提示価格の算出」、「適正な履行体制の確保」などを挙げた。
特に労働報酬下限額の制度の検討については、「適正な労働環境の確保のため有効に作用し、かつ、事業者にとって過度な負担とならない方法」であり、「労使双方から理解される施策とする」ため、条例に一定の期限を設け十分な検証を行い、公共事業を取り巻く状況も踏まえた上で制度を定めるものとした。市ではこの一定の期限を最長5年とし、この間に段階的な条件による工事・業務を試行的に実施し、課題を抽出し、事業者団体などと協議し、他自体の事例を参考にして制度の検討を行うものとした。
予定通り進めば、条例制定では、県内で、四日市市(16年1月施行)に続いて2番目となる。県レベルでは、東海三県のうち、愛知県(16年4月施行)、岐阜県(15年4月施行)が制定している。
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建通新聞社