富山県企業局は、電気、水道、工業用水道、地域開発(駐車場)の4事業を運営。「富山の豊かな水資源を活用して発電、飲料水・工業用水の供給を行い、県民の安全で快適な生活を支えている」と企業局が担う重要な使命を強調。電気事業は合計20発電所を有し、「年間可能発電電力量は約5億3700万キロワット時で、県内世帯数の約3分の1、約15万世帯に相当する」と説明。水道は県西部の4市に給水し、工業用水は96事業所に供給。500ミリリットルのペットボトルに換算して、水道が日量2億本、工業用水が4億本を作り出している。「毎日必ず県民と接点があり、身近で必要なもの。『県民のくらしと共に』を念頭に、誇りを持って事業に取り組んでいく」との姿勢で臨む。
地方公営企業を取り巻く課題として、人口減少に伴う料金収入の減少、施設老朽化による更新投資の増大を挙げる。電力システム改革などの状況変化もあり、「今まで経験したことのない厳しい経営環境に直面している。中長期的に収支の均衡を図り、時代の変化に機敏に対応していくことが必要」と力を込める。16年度末に10年間の経営戦略を策定した。各事業の基本経営目標や具体的な取り組み、収支計画を示している。「効率的な事業の実施による健全経営の確保と新たな課題への挑戦が大きなポイント」と指摘した上で、「県民生活や産業を支えるためにも、将来にわたってサービスの安定的な供給を継続していく」と説き、経済性の発揮と公共福祉の増進に努める。
環境・エネルギー先端県を目指し、企業局においても再生可能エネルギーの導入を促進。これまでに小水力3カ所、太陽光2カ所の発電所を整備した。今後は「採算性に配慮しつつ先駆的、モデル的な整備を図り、その成果が民間事業者に波及し、地元の活性化につなげたい」と捉え、技術的支援などを行う。県内初の地熱発電所の事業化に向け、立山温泉地域で地熱開発の検討を進めている。16年度に地表調査を行い、「今年度は深度500メートルのヒートホール3カ所を掘削し、地熱貯留状況を把握する」とし、効果的な掘削調査を図る。運転開始までに約10年を要するとされ、「事前環境調査を実施するとともに、国に対し環境アセスメントの手続期間の短縮化を要望している」と早期の建設着手を目指す。
水道は15年度、工業用水では16年度から老朽管路の更新に着手した。「アセットマネジメントを踏まえ、国の補助、交付金事業を積極的に活用し、老朽対策にあわせて耐震化も取り組んでいる」と事業費の平準化を図りながら、計画的に耐震・老朽化対策を推進する。発電設備も長期計画に基づき更新・修繕を実施していく。
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すぬま・ひでとし 東京教育大学農学部卒。78年入庁し、森林政策課長、農林水産部参事、次長、部長などを経て16年4月から現職。61歳。発電所などの現業部署、ユーザーの意見を十分に聞き、現場重視で事業の推進にあたる。