京都市は19日、京都市公契約審査委員会(委員長・松中亮治京都大学大学院工学研究科准教授。計10人で構成)を開催。契約審査専門部会の結果報告、公契約基本条例の取組状況などを報告した。
28年度契約審査専門部会の審議結果報告によると、個別契約の入札方法等の審議は3回(工事2、物品1)で、工事の入札及び契約に係る再苦情の処理、WTO政府調達協定に係る苦情の処理は無しだった。
個別契約の入札方法等の審議は、第1回を28年10月28日に開き、27年度に締結した契約のうち、契約金額2700万円以上の物品等の調達契約等から、委員が抽出した案件(@大型汎用コンピュータのオープン化に係る税システム(オンライン処理)設計・開発等業務委託[随意契約]3億9744万円A京都市個人番号カード交付関連業務従事者派遣委託[随意契約]1億4481万2000円B高速鉄道烏丸線10系車両ブレーキ装置(第19編成)[競争入札]2902万9000円C住吉ポンプ場等運転管理委託[随意契約]6億5987万円)を審議、第2回は29年1月24日に開き、27年度下半期に締結した契約のうち、契約金額2000万円以上の工事請負等の調達契約から、委員が抽出した案件(@京都市中央卸売市場第二市場再整備工事ただし、市場本棟新築その他工事[随意契約]30億0240万円A醒泉・淳風統合小学校施設整備事業設計業務委託ただし、建築及び設備基本設計・実施設計業務委託[随意契約]1億0800万円B自動改集札機更新工事(椥辻駅他)東西線椥辻駅、東野駅、蹴上駅、二条城前駅、烏丸線京都駅[競争入札]2億2572万円C旧九条浄水場ポンプ室、耐震調査委託[競争入札]2629万8000円)を審議、第3回は29年3月27日に開き、28年度上半期に締結した契約のうち、契約金額2000万円以上の工事請負等の調達契約から、委員が抽出した案件(@公園緑地樹木維持管理(西京区西部)業務委託[競争入札]2527万2000円A京都市中央卸売市場第一市場施設整備工事[随意契約]3億3480万円B高速鉄道烏丸線レール削正工事、国際会館・竹田間[随意契約]2592万円C配水管布設替工事(京都市伏見区横大路六反畑他)[随意契約]2970万円)を審議し、いずれの案件も契約方法に特に問題があったとは認められず、適正な契約方法であったと確認されたとした。
公契約基本条例の取組状況については、市内中小企業の受注等の機会の拡大で、「工事は28年度の市全体の実績では、市内中小企業が契約件数ベースで約84%、契約金額ベースで約50%となった」「27年度と比べ、契約件数でほぼ横ばいだが、契約金額ベースでは約25ポイント低下した」と報告。「契約金額での低下は100億円を超える京都市美術館再整備工事などの大型のWTO協定が適用される契約や、橋りょう等の特殊な技術を要する工事が多かったことが影響したと考えられる」と分析。「市外企業が受注する場合でも、市内企業の技術力の維持向上への貢献度(下請参入率)を総合評価の項目の一つとして評価して落札者を決定するなど、市内中小企業の受注機会の確保に努力している」とした。
公契約に従事する労働者の適正な労働環境の確保では、「労働関係法令遵守状況報告書」制度の運用状況を報告した。
同制度は、28年6月1日以降に公告等を行う予定価格5000万円超の工事請負契約、予定価格1000万円超の役務委託契約(建物・公園清掃、常駐警備等)、全ての指定管理協定(協定締結者のみ)が対象。
28年度は、工事は契約件数1039件のうち、対象公契約は212件(20・40%)。役務委託は118件のうち、対象公契約は1件(0・85%)、指定管理は32件のうち、対象公契約は32件(100%)。
これを契約金額ベースでみると、工事は671億1200万円のうち、対象公契約は576億7300万円(85・94%)。役務委託は5億5200万円のうち、対象公契約は1億8200万円(32・97%)。
提出事業者数をみると、工事が延べ1339者(実数849者)、役務委託が4者(実数4者)、指定管理が32者(実数19者)。
是正対象者数は、工事が19者(うち18者は是正を確認。1者は是正中)。役務委託、指定管理は全者遵守。
三六協定未締結・未届が14者、就業規則未周知・未届が5者、労働条件未通知が5者、保険未加入が5者。
今後の方向性については、引き続き、事業者に丁寧な説明を行い、制度を着実に定着させていく。報告書提出の徹底や報告書記載事項に関する適切な指導等を通して、適正な労働環境の確保を図っていく。なお工事の競争入札参加資格(30年4月から4年間)の一斉更新手続きにあたり、新たに「社会保険への加入」を資格要件として追加予定であることを報告した。また競争入札参加資格を有しない下請事業者への社会保険未加入対策も検討していく予定。
公契約の適正な履行と質の確保では、28年度の工事の落札率(90・99%)、物品の落札率(84・90%)などを報告。物品のうち、人件費の占める割合が高い役務業務(建物・公園清掃、常駐警備等)について、28年度から新たに最低制限価格制度を適用したことを報告した。
今後の方向性については、工事の予定価格は現在2億円超で事後公表としているが、現状を引き続き検証の上、その範囲の拡大の可否を検討していくとした。
公契約を通じて社会的課題の解決に資する取組では、今後の方向性について、公平性や競争性、また特に中小企業に過度な負担や不利な取扱いにならないよう十分配慮しつつ、これらの取組を加点評価するなどの取組を検討していくとした。その際には事業者の取組を客観的に評価する仕組みも十分研究していくとした。
28年度以後に寄せられた公契約基本条例に関する主な意見では、「地元中小業者に優先的に発注してほしい」「市内中小企業受注率100%を目指し、あらゆる施策を講じてほしい」「賃金の下限を定める賃金条項を備えた公契約条例改正も検討されたい」「労働関係法令遵守状況報告書の調査結果を公表してほしい」「中小企業としては賃金の下限を定める規定には抵抗感がある」「末端の施工業者にまで法定福利費が支払われるよう、法定福利費を別枠計上した見積書活用の徹底を図ってほしい」「適切な最低制限価格を設定してほしい」「地域の安心・安全を担う建設企業を守り育成するため地域貢献を重視した入札の導入など助言・指導されたい」「社会貢献や技術者育成等に取り組む建設業団体に加入している企業も加点してほしい」などがあった。