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日本工業経済新聞社(埼玉)
2017/06/29

【埼玉】ウェスタ川越で地中熱利用普及促進セミナー開催

 環境問題に貢献する地中熱市場が注目されている。NPO法人環境住宅(渡邊弘美理事長)は28日、システムを実際に導入しているウェスタ川越で、2017年度第2回地中熱利用普及促進セミナーを開催した。官庁、金融機関、建設関連企業などから約80人が参加。NPO法人地中熱利用促進協会の笹田政克理事長をメーン講師に迎え、『省エネルギー基準と建築物における地中熱利用の可能性』をテーマに先進的な取り組みを紹介した。利用可能量に対する導入率が進んでいない状況の打開に向け、一般の人々に理解を深めてもらうためのアピールと、個々の企業による日ごろの地道な営業活動が大きな鍵。官民連携の取り組みを強化することで、一般住宅における導入率の向上を目指す。
 冒頭あいさつに立った渡邊理事長は「埼玉県では大規模事業所でのCO2排出量削減が目標以上の成果を得たという報告がございました。しかし問題は一般住宅における省エネ化がなかなか進んでいないことにあります。幸いにも埼玉は地中熱利用に関しては大変条件が良い地域であると考えられております。そこで私どもは、まず広く県民の皆さまに利用の可能性が大きい地域であるという認識を深めていただきたいと思っております。住宅や農業分野などに利用していただくためにも、まずは環境政策や建築工事で指導的な立場にある皆さま方に、地中熱の現状をより深くご理解いただき、日常業務の中でご指導たまわりたいと願っております」と述べた。
 当日、来賓として川合善明川越市長の代理で、市環境部環境政策課の冨田稔副課長が出席し、川合市長のあいさつ文を代読した。
 講演では、笹田氏が「住宅に力点を置いて話を進めたいと思います。普及が進まない最大の理由は初期コストが掛かるということで、経済性をどう考えればいいのか、話をさせていただきたいと思います」と前置きし、説明に入った。
 プレゼンテーションの内容は、一般住宅への利用、経済性、省エネ法・省エネ基準の改正、省エネ基準の適合義務化、ヒートポンプの省エネ基準での計算、ネット・ゼロ・エネルギー住宅/ビル(ZEH/ZEB)などで、住宅・建築物への導入に使える補助金なども紹介した。
 利用におけるコストの捉え方について笹田氏は、「調査をすると、導入してもいいと思う人は、やはり10年で初期コストを回収できればという意見が多く、当面は補助金を用いて初期コスト回収期間を短縮することが、住宅などの地中熱の利用拡大につながる」と結論付けた。
 引き続き、その後は官庁から招いた講師2人が講演。専門的な立場から情報を提供。
 経済産業省関東経済産業局資源エネルギー環境部省エネルギー対策課の山崎達総括係長が『経済産業省における省エネ支援施策』、県環境部エコタウン環境課の北田国男主査が『県における地中熱エネルギーの取り組み』について、それぞれ解説した。
 県では、東日本大震災を契機に1つのエネルギーに頼らない、複数の再生可能エネルギー利用による仕組みづくりに方針を転換。この日は補助金などの支援策を中心に話しが進められた。
 また、ウェスタ川越への設備の納入元である専門メーカーの日本熱源システム鰍フ原田克彦代表取締役社長が、当日開催会場となった同施設の地中熱ヒートポンプの概要や、実運転データなどを紹介。
 施設管理者からの声として「毎日、夜間蓄熱運転で、地下の蓄熱槽に夏は6℃の冷水、冬は50℃の温水を蓄熱しています。オフィスの使用開始時に、蓄熱した冷水、温水を用いて冷暖房に使うことで、ランニングコストの削減を図っています」と、現状が報告された。