京都府はこのほど、「京都府工業用水道事業経営レポート」をまとめ、明らかにした。
府が運営する公営企業の一つである工業用水道事業(長田野工業用水道)については、昭和47年以来、長田野と綾部の両工業団地に工業用水を供給し、平成17年度から黒字経営を行っているが、施設の老朽化が進んでおり、今後はその対策のため経営状況が悪化することが見込まれる。そのため外部有識者からも意見を聴取し、工業用水道経営レポートを作成するとともに、今後の経営安定化に向けた料金負担等の見直しや、北部地域の産業振興を図る観点から、工業用水道の新たな活用策についても取り組みを進める。
経営レポートは、将来にわたり健全な事業運営が継続できるよう、現在の経営状況及び今後の事業運営の見直しや課題を示すものとして作成した。過去5年間(平成23〜27年)と今後3年間(平成28〜30年)の経営状況と経営分析並びに今後10年間(平成30〜39年)の収支見通しを示した。
今後見込まれる投資見通し(平成31〜40年)によると、@浄水場・場外施設の老朽化対策10億4000万円A管路の老朽化対策・耐震化12億6000万円+αB電源喪失への対策2億8000万円を見込む《別表参照》。
@は水処理関連施設に9億3000万円(機械設備3億1000万円(▽送水ポンプ更新▽綾部中継ポンプ更新▽薬品注入設備更新▽緊急遮断弁更新等)、電気設備3億円(▽受配電設備更新(浄水場へ電気を供給する設備)▽運転操作設備(機械設備を運転・制御する設備))、計装設備3億2000万円(▽中央監視制御装置更新▽水位計、流量計、水質計器更新等))と、付帯施設に1億1000万円(土木5000万円(▽門扉、フェンス、擁壁更新▽雨水排水施設、舗装更新等)、建築6000万円(▽換気・照明更新等))。
Aは長田野向け配水管路に12億6000万円(既設管撤去約4億円含む)を見込み、位田橋添架管対策は金額未定(+α部分)。
Bは自家発電設備整備に2億8000万円を見込む。
今後見込まれる投資見通しを全て実施すると仮定した場合の収支見通しを試算したところ、現行の給水収益(年2億1000万円)を維持した場合、多額の投資額(単年度あたり2億6000万円)に対応できず、期間前半に資金不足が発生する見込みで、投資額の全額を企業債の借入(起債比率100%)で確保した場合でも、後年度に企業債償還財源を確保できず、資金不足が発生する見込み。
そこで20円の現行料金単価を30年度から27円、35年度から33円に値上げして試算(基本使用水量は据え置き)したところ、単年度収支を黒字傾向で維持し、期間終了時に累積欠損金を解消できる見通しとなった。
レポートでは、試算結果を踏まえ、急激な料金上昇を避けるため、投資額の縮減と財源確保の両面から検討が必要とし、現実的な収支計画及び更新・耐震化事業計画を検討するとした。
料金負担のあり方については、基本使用水量の一部減量について慎重に検討するほか、減量・撤退負担金の導入、料金算定期間の3年間から5年間の延長を検討する。このほか、福知山市水道事業や綾部市水道事業との広域連携、事務・事業の効率化が図られる包括委託やPPP/PPI等の手法の活用などを検討する。
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京都府工業用水道事業は、長田野工業団地に現在40企業が立地する中、26の事業所に給水している(平成29年4月現在)。綾部工業団地に現在21企業が立地する中、11の事業所へ給水している(平成29年4月現在)。
1日最大給水量は3万7150m3/日。基本料金は20円/m3(昭和59年4月〜)。
工業用水道施設の現状によると、健全化率は平成26年に健全[法定耐用年数未満]62%、経年化[法定耐用年数の1・0〜1・5倍]17%、老朽化[法定耐用年数の1・5倍超]22%。
更新しない場合は平成35年に健全36%、経年化23%、老朽化41%となる見通し。